新規導入のロボットラインとサーボプレスが業績好調の一翼を担う―町井製作所

　同社の創業は1970 年で、当時から金型製作とプレス加工を生業とした。創業からしばらくの間は何でもこなしていたが、やがて自動車部品 にシフト。現在の主要取引先はトヨタ系ティア1 の協豊製作所（愛知県豊田市）、高木製作所（同岡崎市）などである。中でも1977 年にボディ部品メーカーである協豊製作所との取引を始めたことがその後の躍進につながった。「先人たちからは『協豊さんの仕事をしていたプレス加工会社が急に会社をたたむことになり、お客さま側で後を引き継いでくれる会社を探していたとき、金型製作とプレス加工の両方の技術を持つ当社に目がとまり、声がかかった』と聞いています」と業務を統括する専務取締役の山内郁生氏は話す（写真1）。

　会社設立から2000 年代初めまでは本社工場だけで生産をしていたが、業容拡大に伴い2005 年にプレス加工中心の小垣江工場（刈谷市小垣江）、2010 年には金型製作や部品溶接、トライプレスなどを行う高浜工場（高浜市新田町）を開設。現在は複数工場の連係による生産体制を敷いている。山内専務は町井三髙社長の娘婿で、トヨタ自動車のダイカスト鋳造部門に従事した後、2018 年に同社に入社した。「鋳造とプレスではやや畑は違いますが、前職で生産技術に携わった経験が今になって役立っている気がしています」（山内専務）。

　売上高の95% を占める協豊製作所との取引の場合、協豊側でトヨタ自動車からインパネR/Fやロアバック部品の発注を受け、同社でそれらに取り付けるブラケット類などの製造を担うことが多い。

　プレス工場である小垣江工場では2018 年、顧客企業から新たにフレーム構成品である「アブソーバマウンティング」の生産を受注。それを機に、コマツ産機製のメカプレス「OBS シリーズ」8 台（200t5 台、150t3 台）と9 基の6 軸搬送ロボットで構成されるロボットライン（社内ではタンデムラインと呼んでいる）を導入した（写真2）。それまで同工場では45 ～ 250t の順送プレス、60～ 150t の単発プレス、60 ～ 200t までの複数のプレスによるラインペーサラインなど、約50 台のプレス機械を使用していたが、それらに加えて、初の本格的なロボットラインが誕生したことになる。

　アブソーバマウンティング（写真3）はブーツ形状の部品で、深い絞りが入り、しかも重量が1.3kg あるため、ラインペーサでは搬送できない。また順送プレスの1 工程でやろうとすると、800tとか1000t の大型機械が必要となり、投資コストが大きくなる。そのため、当初は加工に必要な8つの工程それぞれに単発プレスを配備する考えだったが、製品の重さからして従業員への負荷がかかることを懸念し、6 軸ロボットによるプレス間搬送を行うことにしたものだ。ロボットが9 基あるのは、最終工程のロボットでナット溶接を行うためである（写真4）。

　コマツ産機製のシステムを選んだ一番の理由は、「プレスメーカー各社から相見積もりを取った結果、コマツさんに優位性が見られたため」と山内専務はいう。「ただし、コスト面だけでなく、OBS プレスはフレーム剛性が高く、音や振動も静かであること。さらにロボットによってワークを横へ横へとスムーズに搬送できるよう、相談に乗っていただけたことも大きかったです」と山内専務。通常、搬送ロボットのアームはプレス機械の前斜めに入るが、それだけでなくプレス本体の上下に光軸を付けロボットがスムーズに動くようにした。一般的なロボットラインの場合、前工程の搬送ロボットがワークをいったん置き、それを後工程のロボットが取りにいく手順を踏むため、工程が1 つ増える。そこで、光軸を上下に付けることで自由度を高め、可能な限りダイレクトに搬送できるようにしたものだ。

　生産品であるアブソーバマウンティングには2品番あり、目下のところロボットラインはそれらの専用システムとなっている。昼夜で動かしているが、プレス機械の剛性や搬送ロボットの動きもスムーズで、きわめて順調に稼働しているという。