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プレス技術 連載「我が社の現場DXはじめの一歩」

2025.06.04

最終回 現場導入レポート オシタニプレス 導入編

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企画・文=ものづくりライター 新開 潤子(オフィス・キートス)
協力=SUS ㈱、㈱オシタニプレス、㈲沼製作所

しんかい じゅんこ:ものづくりライター/オフィス・キートス代表
URL:https://office-kiitos.biz/
取材協力:SUS ㈱
URL: https://www.sus.co.jp/
 小学生でも使えるほど簡単なコントローラ、SiO シリーズ〔エスアイオー、SUS ㈱製〕を使い、工場のデジタル化・自動化(=デジタルトランスフォーメーション、以下DX)で現場の効率化を目指す本連載では、板金加工業・プレス加工業の2 社の協力を得て、SiO シリーズを使った現場DX の実践プロジェクトを進めてきた。
【現場DX プロジェクト概要】
① セミナーとショールーム見学で、社長自らSiO を学び身につける
② 会社に持ち帰り、現場で3 カ所以上にSiOを使った仕組みを導入する
③ その様子を本連載でリアルにレポートする
 前号から取材しているオシタニプレス(大阪府堺市)では、押谷義樹社長(写真1)が自らプログラミングを勉強し、SiO を使った2 つの仕組みを導入することになった。
写真1 株式会社オシタニプレスの押谷義樹社長

写真1 株式会社オシタニプレスの押谷義樹社長

(1)プレス機の動作をカウントして生産量を事務所から把握できるようにする「プレス機ショット数カウンタ」

(2)タレットパンチプレスのスクラップをコンベアで排出する「スクラップ排出コンベア」

 しかし、最初に着手したプレス機での立上げ時に通信がうまくいかず、前号ではSUS のサポートを受けて解決するまでをレポートした。最終回となる今号では、約1 ヵ月後に工場を取材。SiOが現場で動き始めた様子をお伝えしたい。

プレス機4 台のショット数カウンタ

1.導入前の課題
 オシタニプレスでは、新しい設備にはメーカー提供のシステムが搭載されているので、稼働状況や生産数がいつでも確認できる。しかし、プレス機など古い設備にはその機能がないので、1 日の生産量や生産にかかった時間が正確に把握できていなかった(写真2)。例えば1,000 個の生産指示に対して1,000 個生産完了した事実はわかるが、その生産にどれだけの時間がかかり、その1 台で1 日に何品目を加工したか、というような具体的な数字はわからない状況だった。
写真2 古いプレス機が並ぶプレス工場

写真2 古いプレス機が並ぶプレス工場

 以前にタブレット端末を使った記録システムを導入したこともあるが、作業者が記録を忘れたり、スタート/ ストップの入力が事後報告になったりするなどでデータが取れずに断念。そこで、作業者が意識しなくても自動的にデータを取れる仕組みを模索していた。
2.SiO を使って構築した仕組み
 押谷社長はプレス機のロータリカムに着目。プレス機が1 回動作すると必ずロータリカムが1 回転する構造を利用し、4 台のプレス機(写真3)の予備端子から信号を取り出してSiOt に接続。さらにSiOt を社内ネットワークに繋ぎ、データを自動収集する仕組みを構築した(図1)。
写真3  プレス機のロータリカムの予備端子から信号を取得して制御盤内のSiOt に接続

写真3  プレス機のロータリカムの予備端子から信号を取得して制御盤内のSiOt に接続

図1 プレス機ショット数カウンタの構成

図1 プレス機ショット数カウンタの構成

 前号のサポートを受けて1 台はうまくいったので、追加で3 台にもそれぞれ同じ仕組みを追加し、社内ネットワークのIP アドレスを振り分けて接続。IoT︲Monitor で毎日19 時時点の生産量が自動的に集計され、指定のフォルダにCSV ファイルとして蓄積されるプログラムを作った(写真4)。
写真4  プレス機4 台の1 日のショット数が自動で取得できるようになった

写真4  プレス機4 台の1 日のショット数が自動で取得できるようになった

3.プログラム
・ロータリカムが1 回転
 →リミットスイッチがON/OFF する
・リミットスイッチON の回数をカウント
・19 時にデータをcsv 形式で保存してリセット
・翌朝から再度カウント開始
4.こだわりポイント
 最大のこだわりは「作業者が意識しなくても自動的にカウントできる」点だ。生産数のカウントは機械の動きから直接取得するため、作業者の入力忘れや記入ミスといった人的要因を排除。より正確なデータ収集を実現している。
5.得られた成果
・ 1 日の生産ショット数の正確な把握
・見積もりと実際の生産数の差異が判明
・より正確な見積もりが可能に
6.改善ポイント
・ データの蓄積方法:現状では毎日1 つずつcsvファイルが生成されているが、1 週間の数字を確認するにはファイルを5 日分開かなければならない。1 台ごとの生産量を1 つのファイルに1 日1 行ずつ積み重ねていく形にできれば理想的。
・ より詳細なデータ収集:現在は1 日単位でのカウントだが、将来的には1 時間ごと、製品ごとなど、より詳細なデータも取得できるようにしたい。
・ 自動リセット機能の追加:例えば30 分以上の停止を検知したら金型交換と判断して、自動的にカウントをリセットする機能を追加できそう。これで製品ごとのショット数が取得できる見込み。
 かかった費用:約88,000 円

 SiOt 関係の部品はSUS 公式の法人向けオンラインストア・ウェブサスと、Monotaro で購入。ハブやLAN ケーブルはAmazon で調達した。
・SiOt 基本キット 15,700 × 4 = 62,800 円
・ケーブル・コネクタ類 6,240 円
・事務所と現場をつなぐLAN ケーブル 14,000 円
・ハブ 5,000 円 
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