プレス技術 連載「我が社の現場DXはじめの一歩」
2025.06.04
最終回 現場導入レポート オシタニプレス 導入編
企画・文=ものづくりライター 新開 潤子(オフィス・キートス)
協力=SUS ㈱、㈱オシタニプレス、㈲沼製作所
電気が苦手でも自分で形にできた
今回のプロジェクトで、セミナーから自社の現場への導入までの一連の流れについて、押谷社長に感想を聞いた。
―プロジェクトに取り組んだ感想は?
押谷 今までこういったことをやろうと思うと、何かしらの業者さんにお願いしないといけないという認識でした。でもSiO を使った改善に実際に取り組んでみて、自分たちの考えていることが自分たちで作れるということが分かり、新しい発想が出てくるようになりました。それが一番の収穫だと思います。
―これから自動化したい工程はありますか?
押谷 今、製品のピッキング作業を自動化できないかと考えています。それと、加工したものを次の工程に持っていく搬送の部分も自動化できれば、作業者の負担がさらに減らせると思うんです。今回の経験を活かして、いろいろなアイデアを実現していきたいですね。
―これから取り組んでみたい人にメッセージをお願いします。
押谷 思った以上に構造がシンプルでわかりやすいので、取り組みやすいと思います。私のような電気が苦手な人間でも、自分で改善の形を作ることができました。取組みを始めれば、おそらく従業員からも「あんなことがしたい」「こんなことができないか」というアイデアが出てくると思うので、ぜひチャレンジしてほしいと思います。
― ありがとうございます。次の取組みも楽しみにしています。
SiO 開発者 辻宏之氏コメント
挑戦した2 つの仕組みとも無事に完成したということで、ほっとしました。
1 つ目の「プレス機4 台のショット数カウンタ」では、同じように古い設備のデータ取りに苦慮されている現場の方を多く見かけるため、とても参考になるのではないかと思います。古い設備でも様々なセンサを後付けすることでデジタル化することができるため、今までの運用はそのままに進化させることができるメリットは大きいと思います。
改善ポイントのファイルの生成ですが、「1 週間単位でファイルを生成する」という設定があります。そちらを使用すれば1 週間分の結果を1 つのファイルで閲覧することが可能ですので、是非、試していただければと思います。
2 つ目の「スクラップ排出コンベア」では、作業者の負担軽減ということで、現場の方は身体的にも精神的にも余裕が生まれたのではないかと思います。作業が1 つでも減ることで付加価値のある作業に集中できるため、大きな改善になったのではないでしょうか。こちらはスクラップを検知するためのセンサの選定が難しかったと思いますが、ピッキングセンサで解決できたということで、良かったです。センサにも用途に応じて様々な種類があるので、その中から最適なものを選定していただければと思います。
最後に今回のプロジェクトへの取り組みによって、「新しい発想が出てくるようになった」という感想は、開発している側として、とても嬉しい言葉です。潜在的に存在している様々な現場の困りごとを掘り起こすためのきっかけをSiO で提供できたのではないかと思います。
今後もこれを機に様々な現場改善をSiO で検討していただければ幸いです。
おわりに ~社内人材によるスモールDX のススメ
本連載では、プレス・板金加工のオシタニプレスとプレス加工の沼製作所の2 社で、SiO シリーズを活用した現場改善の実例を紹介してきた。2社の取り組みを取材して印象的だったのは、トップ自らがプログラミングを学び、小さなところから改善を考え、取り組む姿勢だった。
このような仕組みは外部の業者に依頼すれば確実かもしれないが、このような小さな改善案件を請けてくれるシステム会社は多くないと思われるうえ、改善や変更が発生する度に費用がかさむ。
しかし今回のように社内で取り組めば、必要な時に必要な改善を低コストで実現できる。しかも自分たちで作った仕組みは自分たちで改良もできるので、メリットは大きいことと思う。「自分たちでできる」という感覚を持てたことが、両社にとって最大の収穫だったのではないだろうか。
本連載は今回で一旦終了となるが、SiO シリーズを使った改善に取り組まれる企業が出てきたら、ぜひその事例も紹介できればと考えている。「うちでもできそうだ」と思っていただけた方がいればぜひチャレンジいただき、編集部または筆者まで情報をお寄せいただければ幸いである。
本連載ではSUS ㈱に全面的にご協力いただき、セミナーとショールーム見学、取組中の助言などのサポートを受けることができたが、これは本連載の取材のために特別に実施してくれたわけではない。SiO シリーズのセミナーは、5名以上を目安に人数が集まれば開催可能で、場合によっては出張開催もできるということだ。
ショールーム見学については、北海道から九州まで全国に13 ヵ所あるショールームで随時受け付けている。また、アルミフレームやSiO シリーズの実物と事例を詰め込んだトラック「エクスペリエンスカー」(写真10)では、出張展示会も開催できる。これらはいずれも完全予約制なので、希望する場合はSUS のホームページから最寄りの営業窓口(iDshop)にご相談を。