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プレス技術 連載「値決めの鉄則」

2024.10.22

第2回 部品メーカーに必要な「4つの戦略」

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西田経営技術士事務所 西田雄平

利益一覧表から導く「製品戦略」

 製品戦略とは、儲かる製品群はたくさん販売し、儲からない製品群からは手を引いていこうと考えていくことです。利益一覧表に「素材の種類」「板厚」「製品形状」「プレス機のトン数」「市場」「用途」などの項目を追加してソーティングしていくと、自社の得意分野と不得意分野が利益という数字で明確にすることができます。

1.儲けの少ない製品群はディスコンしていこう

 ディスコンとは、ディス・コンティニューの略で「続けるのをやめる」という意味です。平たく言えば生産中止や販売中止を指します。

 なぜディスコンする必要があるかというと、この世のすべての製品・技術・サービスには「儲け寿命」が存在するからです。儲け寿命とは、別名「製品ライフサイクル」や「プロダクト・ライフサイクル」と言われ、製品Aの売上や利益の推移は図表3のようなグラフを描きます。
図表3 製品A の儲け寿命

図表3 製品A の儲け寿命

 導入期とは、製品Aが世の中に登場したばかりの段階です。製品自身やそこに使われている技術の認知度は低く、売上も低い状態です。利益は製品開発費用や技術開発費用がかかるため赤字からスタートします。

 成長期とは、その製品や技術が世間に認知されて市場に広まっていく段階です。売上と共に利益も比例して高まっていくのが通常です。

 成熟期とは、その製品や技術が世間で当たり前となった段階です。製品や技術自体がもつ価値が徐々に低下し、売上や利益は減少に転じます。

 そして衰退期。寿命が尽きてしまった段階です。人間が若返ることができないのと同じように、寿命が元に戻ることはほとんどありません。

 例えば、馬車から自動車の時代になった、ブラウン管テレビから液晶テレビの時代になった、ガラケーからスマホの時代になった、こういった変遷を思い浮かべてみるとイメージしやすいと思います。

 筆者はこれまで多くの企業で「利益一覧表」を作ってきましたが、各社の全社利益額(または利益率)ランキングのワーストには、10年以上前から生産している製品が頻繁にランクインしてきます。その理由は、サービスパーツになって極小ロット生産になってしまったとか、他製品との抱き合わせ価格で特価を出したのがずっとそのままになっていたとか、年に1回だけ倉庫の奥から金型を引っ張り出してきて、不良を出しながら泣く泣く作っているなどといったようにさまざまですが、多くの場合は煎じ詰めると儲け寿命が尽きたからだと考えられます。

 これから販売数量が増える見込みもなく、どれだけ頑張って水をあげても、再び花が咲くことのない、そのような製品がディスコン対象です。

 自社製品や自社ブランドをお持ちの会社であれば、ディスコンの決断はしやすいのですが、部品メーカーさんの多くは受注生産形態なので、すぐさま一方的に「やめます」とは言いづらいのが現実です。したがって、実務的には上記のような事例を「値上げの価格交渉カード化」したり「不得意な○○製品群は積極受注しない」、「〇年間流動していない金型は1年以内にお返しする」といった方針を打ち出したりして、中期的な視点でディスコンを図っていきます。自社の商品構成をじわじわと塗り替えていくイメージです。

2.ディスコンしていくと売上が減る。だから技術を磨き、商品力を強化する

 残念ながら、寿命が尽きてしまった製品や技術を今までと同じように作っていても、利益は増えていきません。そうかと言ってディスコンばかりしていくと、今度は売るものがなくなってきます。工場が暇になってしまいますので、他に売るものを用意していかないといけません。部品メーカーさんの場合で言えば、技術の錬磨がそれにあたります。

 顧客が抱えている課題や不満を探り、それを解決する加工技術を磨いたり、管理技術を磨いたりしていくことです。そして顧客には「当社の加工技術を用いれば、従来と比較して○○部は○○%向上できます。そのため顧客の生産工程でかかっている○○作業時間を○○%短縮できますよ」といった提案をし、喜んでもらう。「当社は徹底して生産管理技術を磨いてきたので、リードタイムは他社の半分で問題ありません。仕掛り在庫の削減に貢献できますよ」といった提案し、喜んでもらう。このような顧客志向かつ提案型の発想で取り組んでいきます。

 「えぇ…。そんな中小企業で技術を磨くなんて…」と言いたくなる人もおられるかもしれませんが、残念ながら、それを言ってしまってはお終いです。例えば花屋が「ウチは鮮度の高い花が用意できないので、しおれた花しか置いてません。でも高く買って欲しいです」と言っているのと同じです。顧客は集まってきません。会社規模や業種業態に関係なく、顧客に喜んでいただけるよう、これからどんな技術を磨いていこうかとか、どんな商品づくりをしていこうかと考えることは、商売人にとって避けては通れない永遠のテーマです。
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