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プレス技術 連載「値決めの鉄則」

2024.10.22

第2回 部品メーカーに必要な「4つの戦略」

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西田経営技術士事務所 西田雄平

利益一覧表から導く「価格戦略」

 「利益一覧表」を作ってみると、これから注力したい顧客・製品と、そうでない顧客・製品が見えてきます。価格戦略は、営業戦略と製品戦略がベースとなって決まってきます。また、社長の経営哲学や、顧客との関係性、将来性、市場、タイミング、工場の操業度などを総合的に考え「いくらで売ろうか」と意思決定していきます。

 例えば、製品戦略でディスコン方針を立てたのであれば、その分野の製品や案件は無理して受注に動くことはしません。ただ、顧客に対して“その製品は儲からないので、やりたくない”と、面と向かって言ってしまうと角が立ってしまうので、基本的には撤退を前提とした高い値付け(お断り価格)をして“この価格でもよろしければお請け致します”という価格戦略が描かれます。

 他には、新しい設備を導入したとか、工場を拡張したということであれば、固定費の回収を急ぐため、通常より安い値付けをしていくことも考えられます。ときには原価割れでも受注した方が良いケースもあります。

 昨今話題の「人件費」「仕入価格」「燃料代」などの上昇分をどれだけ価格転嫁するかも、経営方針次第です。理想は100%価格転嫁ですが、その顧客との取引拡大を目指すのであれば、転嫁率は赤字にならない程度に抑えることもあり得ます(その場合は特別サービスしたことを顧客に伝え、“恩を売っておくこと”が大切です)。

 こうした判断を適切に行っていくために必要なのが、「製造業のための正しい原価計算」です。ドンブリ勘定、KKD(勘と経験と度胸)、長年続けてきた我流はもう通用しません。間違った原価計算を続けている限り、儲かる値決めは決して実現できません。きっちりと儲けたければ、まずは正しい原価計算すること、これが大原則です。

利益一覧表から導く「コストダウン戦略」

 コストダウン活動は製造業の宿命とも言われますが、その理由はなぜでしょうか?

 筆者は、コストダウンが必要な理由は「儲け寿命」を延ばすためだと考えています。製品の値段(価値)は、どこかの段階で必ず下がってきます。そのため、常に原価低減を図っていかないと利益の確保ができなってしまいます。

 最近は少なくなりましたが、数年前までは「顧客からの定期的な値下げ要求」が常識でした。それに応えていくため、各社ともコストダウン活動に懸命に取り組んでこられたことと思います。

 また、前節の製品戦略で技術力や商品力を磨くことの重要性を説きましたが、それには時間がかかります。5~10年先を考えていく話がほとんどなので、それが実現するまでの間は、原価低減によって利幅を維持していかなければなりません。

 中小部品メーカーにおけるコストダウンのコツは「利益一覧表」と「原価計算書」を片手に進めていくことです。多くの会社では「工程単位」や「職場単位」での改善活動がなされていますが、筆者らの顧問先では「製品単位」で取り組んでもらっています。手前味噌ですが、その効果は絶大で改善効果金額もさることながら、何より現場の人たちが楽しんで改善活動に取り組んでいます。なぜでしょうか。その理由は、自分たちの取り組みによって「製品Xの利益が年間〇〇〇万円増えた!」という具体的な数字で見える化していっているからです。貢献度が目に見えて面白いのです。その進め方は次の通りです。
①まずは利益一覧表で、儲かっていない製品(病人)を探し出します。

②次にその「原価計算書」を見て、原価項目のどこが高いのか、どこにムダがあるのか(病人のどこにガン細胞があるのか)見つけ出します。

③そしてガン細胞だけを“集中治療”。部門横断的なチームを組んでやっつけていきます。この時のチームメンバーには、すでに原価計算のロジックが叩き込まれています。指導会を通じて、原価のどこをどうすれば、いくらの原価低減できそうだ、利益はいくら改善できそうだ、こういったシミュレーションができるようにしっかりと鍛えてあります。

④治療方法が決まったら、毎月の収益改善会議を開催して取り組み結果を報告。PDCAを回していきます。

⑤上手くいった治療方法だけを類似製品に水平展開(コピペ)していきます。
 非常に効率的なので、人手不足の中小企業にピッタリのやり方です。筆者らのホームページには「収益改善事例」が掲載されていますので、ぜひ参考にしてみてください。

全社員のベクトルを合わせよう!

 このように「利益一覧表」が完成したら、「4つの戦略」を描いていきます。そして、全社員のベクトルを合わせ、全社最適で動いていきます。

 営業も、製造も、技術も、生産管理も、購買も、品管も、経理も、どの顧客・製品が重要であるかを理解し、同じ方向を向いていくのです(ただし、実施にあたって全社員にすべての損益状況を開示する必要はありません)。

 時として、営業は売上の大きな会社の仕事を、製造は作りやすい会社の仕事を優先するといったちぐはぐなケースを見かけます。しかし、そうではなく、営業も製造も「儲かる会社」の仕事に力を注いでいこう!」このような視点をもってもらうことが大切です。

 次回は、多くの会社が誤解している「原価と売価の混同」についてです。儲かる値決めをしていくにあたって極めて重要な部分になります。お楽しみに。
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