BOM が命!
1.BOM とは何か
材料費を計算する際の生命線がBOM(Bill OfMaterial)です。別名「材料表」や「部品表」と言い、製品1 個あたりに使用する材料やその使用量を一覧表にしたものことをいいます。
2.BOM の種類
(1)加工業に向くサマリー型BOM
BOM には2 種類あり、その一つがサマリー型BOM です(図表2)。サマリー型BOM の特徴は「ぶんちん型」であり、階層が一つである点です。原材料を仕入れてプレス加工や板金加工を行うことがメインの企業であれば、このタイプが向いています。
(2)組立業に向くストラクチャー型BOM
そしてもう一つがストラクチャー型BOM です(図表3)。ストラクチャー型BOM の特徴は「ツリー上」になっており、階層が複数ある点です。こちらは組立加工業などの生産管理や資材管理が特に重要な企業向けです。
3.ダメなBOM の事例
ごく当たり前のことですが、BOM が正しい状態でなければ正確な材料費を計算することはできません。原価がいい加減になってしまうので、利益を出す値決めもできません。しかし筆者がみてきた会社のなかには、次のような“ダメなBOM”で原価計算してしまい「全然儲からない…」と嘆いていたケースもありました。
(1)梱包資材が算入されていない
これが非常に多くみられるパターンです。段ボールやプラスチックトレーなどの梱包資材が材料費として計算されておらず、顧客の要求する梱包仕様に応じた原価になっていないのです。しばしば梱包資材費は間接費や管理費といった原価項目に含まれていたりするのですが、適切に価格転嫁していくためには梱包資材はBOM に切り出しておくことが大切です。
(2)副資材が算入されていない
次に副資材です。主に添加剤、接着剤、グリス、はんだなどです。これらの使用の有無についても顧客の要求する製品仕様に応じて変化することがほとんどです。したがって、材料費として見える化しておくべきです。
(3)ロスが算入されていない
詳しくは後述しますが、材料ロスは3つに分けて考えていくのがミソです。そしてロス率は一律○○ % とするのではなく、ロスのよく出る製品(材料)とあまり出ないものとで分けて設定していくのが本来の姿です。「細かすぎる」と感じるかもしれませんが、値上げ・値決めを成功させた筆者の顧問先では当たり前に実施しています。だからこそ顧客に理路整然と説明ができ、肚の据えて価格交渉へと臨んでいけるのです。
もちろん、中小企業はマンパワー不足のところがほとんどです。筆者の顧問先企業でも全てことを一度に完璧にできるわけではありません。しかし、時間をかけて着実にレベルアップを図ってきた結果、収益改善へと結びついています。
(4)設計変更が反映されていない
仕事を進めていく途中で設計変更が入ったり顧客の要求仕様が変わったりすることは、多くの製造現場では日常茶飯事だと思います。変更の結果をBOM に反映させ、常に最新の状態を保つことが重要です。
その理由は、BOM が古いままだと古い材料費で損益判断や価格転嫁の交渉をすることになってしまうからです。これでは収益改善は進んでいきません。さらにBOM の間違いは資材の誤発注を引き起こします。
(5)仕入単価の変動が反映されていない
これも当たり前のことですが、仕入単価が変わったらBOM を更新して最新の材料費を計算できるようにしておかねばなりません。理想の姿は、仕入単価マスターを作りPC を使ってBOM と瞬時に連動させていくことです。生産管理システムの機能として備わっているところもありますし、企業の規模によってはエクセルで十分管理できるところもあります。
(6)社内で一元管理されていない
最後のNG 例が、社内に同じ製品のBOM が何種類も存在し一元管理されていないパターンです。具体的には設計が作ったBOM、生産管理が作ったBOM、製造が作ったBOM などがあり、それぞれが各担当者のPC フォルダの中に保存されているのです。しかも、中身は微妙に異なり、同じ材料費になることはありません。このような管理になってしまう理由は、「設計の作ったBOM で材料手配をすると、材料が足りなくなるから生産管理で手配用のBOM を作っている」とか「生産管理の作ったBOM で製造すると、逆に部品が余ってしまうから製造で独自に作っている」など様々です。