材料ロスは3 種類に分ける!
1.3 つの材料ロスとは
材料ロスは3 つに分けて考えることが大切です。その理由はそれぞれコストダウンの仕方が異なるためです。昨今、仕入単価は上昇する一方なので材料ロスが出にくい作り方や素材を主体的に選んでいかなければなりません。また、それを踏まえた改善提案を顧客に行っていくことが大切です。「どうせ顧客に言っても認めてくれない」と初めから諦めるのではなく、しっかりと提案していきましょう。
これまでのコンサル経験においても顧客が改善提案をもっと欲しがっていたというケースに何度も遭遇しましたし、筆者の前職経験(大手バイヤー)から言っても嬉しいものでした。モノは試しの精神で、とりあえず打診してみましょう。もしダメだった場合でも、それはそれで先月号で触れた「価格交渉カード化」していけば良いのですから。
それでは、材料ロスの種類について解説します。材料ロスには次の3 種類があります。
①不良ロス
②歩留りロス
③段取り材料ロス
まず、「不良ロス」と「歩留りロス」については、図表4 を見てください。1 枚の金属板から菱形状に切断加工するイメージです。
「不良ロス」は上手く菱形状に切断加工できなかった部分です。「歩留りロス」はグレー部分です。状況にもよりますが、「不良ロス」は製造部門が主体となって、製造条件や設備の改善などによって減らしていきます。しかし「歩留りロス」は製造部門ではなく、設計部門や生産管理・購買部門が主体となります。具体的には、端材が出にくいネスティングを行ったり、丁度良い寸法の素材を調達するなどです。
大事なことは、これらのロスを分けて集計することです。「歩留りロス」の多い工場の製造部門にどれだけ「ロスを減らせ!」と指示をしても効果はありません。その逆も然りです。
そして3 つ目の「段取り材料ロス」は、金型調整や試し打ちの際に発生するロスです。現代では多品種少量生産が当たり前なので、どの企業でも段取り替えは頻繁に行われています。その際に発生するロス量を捉え、それを減らしていく活動は必須と言えます。
筆者の顧問先企業では、社員がこういったロスの違いを理解し、原価計算書に見える化し、原価低減、提案営業、価格転嫁といった収益改善活動へとつなげています。そしてその多くは本連載の読者層と同じ会社規模(従業員数100 名以下)の中小企業です。きっと皆さんの会社でも実行できると思いますので、コツコツと取り組んでいってほしいと思います。
仕入単価の決定方法と変動対策
1.仕入単価の決定方法
最後に仕入単価の決定方法について触れておきます。企業によってどの方法が良いかは変わってきますので、下記を参考に自社に合う方法を考えてみてください。
(1)将来の価格を類推する
本来、「見積り」とは将来かかる費用を予測した金額です。したがって、値決めの際に行う「標準原価計算」は、なるべく将来の仕入価格を予想して計算しておくのがベストです(標準原価については先月号で解説しました)。
(2)現在の仕入単価のまま使用する
上記が難しい場合は、この方法しかありません。素直に現在の仕入単価で材料費を計算し、値決めを行います。
(3)見積書に相場(市況)を明記する
そして将来の仕入価格の変動に備え、見積書にその時の相場(市況)を明記しておきます。この布石を打っておくことで数年後の素材価格の高騰に備えます。ただし、この方法は素材価格が下落した場合に顧客からのコストダウン要請を受けることがあります。
(4)数カ月おきに見積書を出し直す
少々面倒ですが、自社と顧客にとって最もフェアな方法です。この場合は製品点数にもよりますが、ある程度機械的に原価計算できるようになっておく必要があります。
今回は「侮ってはいけない!材料費の正しい計算方法」というテーマでお送りしました。自社の現状と比較していかがでしたでしょうか。課題が見えた方はさっそく見直しを図ってみてください。次回のテーマは「加工費の正しい計算方法」です。最近話題の“労務費の価格転嫁”にも大きく関連してきますよ。お楽しみに。