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プレス技術 連載「知って得する!ワンポイント経営アドバイス」

2026.08.17

第1回 公的機関を活用して生産性を向上させる

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中嶋亜美

なかじま あみ:中小企業診断士
「人手不足のため採用について相談したい」という企業とよく話せば、新規採用をせずとも業務プロセスの見直しにより既存の人員で対応できるようになるという結末に至ることがある。また、効率化のために新しい機械を導入したものの、一部の工程が効率化されるだけで全体の効率が上がらなかったといった状況を見ることは一度や二度ではない。こうした問題の解決には、表面的な対策でなく根本原因にアプローチすることが有効であり、企業にとっては外部の人間との対話がその手助けとなる。

生成AIで十分か?

 本連載第1回のテーマは公的機関の活用である。公的機関が提供する支援サービスは、専門家派遣や相談窓口などがある。読者の中には、過去に専門家やコンサルタントと名乗る人物と対話したが、期待ほどの成果を得られなかったという苦い経験をもっていたり、経営に関する助言提供なら生成AI で十分という人もいるかもしれない。確かに、一般的な助言なら生成AI でも可能だ。生成AIを活用して自律的に改善できる人はそうしていけばよい。しかし、公的機関を利用するメリットはまだ十分にある。その理由は、以下2点の生成AI の弱点にある。

 1点目は、生成AI は入力された指示文とインターネットにある情報からしか論理を組み立てられないことだ。インターネットには人が載せたいと思って載せた情報しか存在しない。一般的に企業が外部の専門家に求めるのは理論と他社事例だ。生成AI は他社が自慢しようとしてインターネットに載せた事例は語れるが、非公開の社内での取組みや失敗事例を語れない。他方、公的機関などで経営相談をしている人間は、インターネットには載らない事例や経験も踏まえた助言ができる(無論、企業を特定できる情報は伏せたうえで、だ)。

 2点目は、生成AI には継続的な経営改善に関する「ペースメイカー」や意思決定の背中を押す役割は果たせないことだ。学習塾や予備校のようなものを想像してほしい。コロナ禍にオンラインの学習コンテンツが普及してもなお対面の学習塾が存続しているのは、「勉強を教えてくれる」という価値だけでなく、「勉強のペースをコントロールしてくれる」または「そこに行っている時間は勉強してくれる」という親からすると安心のシステムがあるからだ。

 2点目について言い換えると、生成AI にできないのは伴走支援だ。人は怠惰なので、強制力が必要だ。生成AI は、こちらから聞きに行けば相談相手になってくれるが、能動的に働きかけてくることはない。「そういえばあの機械導入検討の件ってどうなったんですか?」なんて聞いてくれないわけだ(今のところは)。

 また、意思決定をするのにはパワーがいる。時には背中を押してもらいたいこともあるだろう。そんな時こそ、公的機関や外部の専門家に頼るとよい。コンサルタントは「企業のお医者さん」と例えられることもあるが、実際は塾のように使うのがよいだろう。医者は症状が消えたら通わなくてよいが、塾は成績が改善しても通い続けるものだ。経営改善も同様に、継続的な支援を受けることで成果が出やすくなる。

公的機関の活用で売上げ・利益とも増加

 中小企業庁が発行する「中小企業白書(2024年版)」では、小規模事業者のうち公的機関を含む中小企業支援機関を「頻繁に活用している」割合が37.8%、「ある程度活用している」割合は49.4% である。活用している事業者は活用していない事業者に比べ売上げ・利益ともに増加との回答をしており、支援機関の利用が業績に好影響をもたらす可能性が示唆されている。

 これは「支援機関を活用したから業績が向上した」のではなく、「業績向上を目指す企業が支援機関を活用した」という逆相関の可能性もあるため因果関係の特定は難しい。しかし、こうした機関を頼ることは経営改善の可能性を広げる選択肢の一つであることは間違いないし、支援機関の活用と業績向上の関連性が示されていることは注目に値する。

事前の準備が大切

 さて、公的機関の提供する支援は、経営の専門家が企業の経営状況を客観的に分析し、改善の方向性を提案するものである。表1に示すような公的機関が提供しており、ほとんどが無料または低コストで利用できる。相談は対面もあれば、ZOOM やメール、電話などもある。
表1 各地の中⼩企業⽀援実施機関⼀覧

表1 各地の中⼩企業⽀援実施機関⼀覧

引用元: 中小企業庁Web サイトを基に筆者作成

 申し込みの後に日程調整が行われ、専門家との面談が設定される。当日は専門家がヒアリングと助言を行う。必要に応じて、財務や生産、受注などに関するデータを提供することも求められる。

 この初回の面談で明らかになった課題解決に向けて伴走支援が継続して行われることが多い。面談の回数や2回目以降の相談料金は機関により異なるが、最大の派遣回数は3~8回程度が一般的だ。例えば東京商工会議所の場合、最大9回無料で面談を受けられる制度がある。

 面談時間は1~2時間程度が主流のため、事前準備が重要だ。「garbage in, garbage out.」という言葉がある。これは直訳すると「ごみを入れればごみが出てくる」という意味の言葉で、どれだけ高性能なコンピュータを用意しても、入力データが間違っていれば計算結果も間違って出てくることを指している。これは人も同じだ。

 事前準備のポイントは大きく2点ある。1点目は、相談事項の事前整理だ。漠然と「経営をよくしたい」などでなく、なるべく具体的にすること。悩みもすべてはぶつけられないため、優先度もつけておくべきだ。図1のようなステップで事前ワークをして臨むのがよいだろう。
図1 事前準備

図1 事前準備

 2点目として、会社の基本データを整理しておくとよい。先に述べたように財務や生産、受注などに関するデータを求められることは多い。細かい情報までは出せずとも概観を端的に伝えられるよう準備しておくと的確な助言を得られやすい。相談テーマに応じて、どういったデータが必要か事前に機関と相談するとよい。


 経営者は日々、意思決定の重圧を一人で抱えている。しかも日々の業務に追われ、経営上の課題にじっくり向き合う時間が取れない読者も多いだろう。しかし、だからこそ、公的機関の支援を活用する意味がある。短時間でも課題と向き合い、アドバイスを受ける時間をつくることで、新たな視点や気づきが得られるはずだ。孤独な戦いにならぬよう、お得に使えるものは使って経営をよりよくしていこう。

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