第8回 3次元設計の効果を最大限に発揮するための環境づくり

　設計業務を行う部門では、3 次元CADを導入して3 次元設計しているにもかかわらず、後工程の業務が2 次元図面中心で進められているといったケースも少なくはない。せっかく作成した3 次元データを設計部門以外でも活用して業務が進められるようになれば、さらなる作業効率化や品質向上などが見込める。

　今回は、設計部門が3 次元CADで作成した3 次元データを他部門へ共有し、社内全体で3 次元データを活用していく方法について解説する。

　3 次元データを他部門で確認する際、設計部門で使用する同じ3次元CADをわざわざ導入する必要はない。3 次元データの作成が目的であれば3次元CADの導入が必要だが、3 次元データを見て確認するだけであれば「Viewer（ビューワ）」を活用した方が良い。

　3 次元CADは一般的に機械系のものだと100 万円以上と高額だが、ビューワは形状を見るだけであれば無償のものがある。3 次元CADに付属しているビューワもあれば、Web ブラウザ上で3 次元データを閲覧できるものが無償から有償までさまざま存在する（図1）。

　有名なものとしては「3D PDF」がある。3DPDFは一般的なオフィス業務でも使用されている無償の「Adobe Acrobat Reader」で閲覧できるが、利用するには3 次元CADで作成した3 次元データから3D PDF形式のデータへエクスポートする必要がある。3 次元CADの種類によっては3D PDFでの書き出しに対応しているものもあるが、非対応の場合にはコンバータを別途購入するか、別の方法を考える必要がある。

　ビューワで閲覧できる3 次元データは、一般的にポリゴン形式やメーカー独自形式のデータが用いられ、3 次元CADで作成されたものよりもデータ容量が軽量化されている（図2）。また、ビューワには形状変更以外の機能、例えば寸法（サイズ）を確認したり、断面を切ったり、注記を付加したりなどの形状確認に特化した機能が搭載されている。データが軽いため、ハイスペックなPCやワークステーションがなくても、一般的なPC環境で3 次元データをクルクルと軽快に回しながら、さまざまな角度から形状を確認できる。

　ただし、ビューワはあくまでも3 次元データの閲覧が目的であるため、CAMやCAEなどの作業を行う場合には、3 次元CADとのデータのやりとりとなるので注意してほしい。

　最近ではタブレット端末で3 次元データを確認できるアプリケーションも数多く登場している。担当者がタブレット端末を片手に、製造現場で3次元データを確認しながら組立作業を行ったり、営業先で3 次元データを見ながら打合せを行ったりなど、さまざまなシーンで活用されている。何よりも、重たくてかさばるモバイルワークステーションやノートPCを持ち歩かずに済むというのは大きな利点である。

　また、Web ブラウザ上で3 次元データを閲覧できるビューワは、PCのスペックなど利用環境に依存せず、インストール不要で、インターネット接続環境さえあれば、どこからでも使用可能である。中には、パスワードや権限を設定できるものもあり、セキュリティ面でも安心して利用できる環境が整備されている。

　そのほか、離れた場所にいる複数の関係者同士で設計検討やデザインレビューなどを行う際、共通のプラットフォームなどを介してリアルタイムにつながり、3 次元データを確認しながら打合せを行ったり、コメントや情報をやりとりしたりできるものもある。