機械設計 連載「教えてテルえもん!3次元ツール習得への道」
2024.11.05
第3回 3次元CADでのアセンブリの基礎
いわてデジタルエンジニア育成センター 小原 照記
おばら てるき:いわてデジタルエンジニア育成センター長。自動車内装部品の設計会社を退職後、岩手県北上市を活動の拠点に10年以上、3次元デジタル技術関連の人材育成、企業支援に努め、学生から求職者、企業まで幅広く指導し、3次元から始めるDX推進活動を続けている。同センター長のほか、3次元設計能力検定協会の理事も務める。
はじめに
機械設計において1 個の部品を設計して終わりということはなく、複数の部品を組み立て、各部品を合わせることで機能を持たせる設計が求められる。3 次元CADには、モデリングした部品を組み立てる「アセンブリ」という機能がある。3 次元CADで組み立てられた製品のことも「アセンブリ」と言い、2 次元CADで言うところの「組立図」に相当する。「アセンブリ=組立」と考えてよい。自動車を例にすると、エンジンやタイヤといった、各部品が組み付けられたものを「サブアセンブリ」、そして、すべての部品(パーツ)やサブアセンブリが組み付けられたものを「トップアセンブリ」と呼ぶ。複雑なアセンブリは、部品やほかのアセンブリ(サブアセンブリ)を含む多数の部品で構成される。
アセンブリは自分の設計した部品で、実物の試作品を作製することなくコンピュータ上(仮想空間)で組立て検証を行う「仮想(バーチャル)試作」が可能である。モノをつくらずに検証が行えるため、実試作回数を減らし、実際にモノをつくってからの修正を減らすことができ、時間短縮、コスト低減、品質向上につなげることができる。部品表とも連携でき、どの部品が何個組み付いているのかをすぐに表で確認できるため、コストの見積もり算出や部品の手配などにも役立てることができる。
3次元CADにおけるアセンブリの機能と役割
アセンブリの機能は3次元CADによって異なるが、部品と部品との位置合わせには拘束を付加していく方法がある。3 次元モデルの面と面を接触拘束させたり、軸と軸を一致拘束させたり、距離や角度を指定したりなどの拘束作業をしながら、スライドする機構や回転する機構を設定していく。3 次元CADによっては、スライド機構、回転機構を部品間に直接、設定していくものもある(図1)。
図1 3 次元CADでのアセンブリ拘束の例(左:SOLIDWORKS操作画面、右:Fusion 360 操作画面)
拘束を与えながら位置合わせをする場合、自由度を考えていく必要がある。はじめは3 軸の並進と回転の6 つの自由度がある。拘束を付加することで自由度を減らし、動きを制限していくことでスライドや回転の動きを定義したり、位置を固定したりすることが可能となる。
一般的な拘束の種類として、一致、平行、垂直、正接、同心円、固定などがある。3 次元CADによっては、拘束する自由度に特別な定義関係が付与でき、歯車やカムなどの機械的動作を設定できるものある。
アセンブリする基本的な順番は、はじめに基準となる部品を固定する。固定した部品に対して、ほかの部品をさまざまな拘束を付加して位置を合わせていく。なぜなら、1 つは固定しているものがないと、3 次元空間上を部品が自由に動いてしまうからだ。基準となるものを1 つ固定しておくことで、スライドや回転の動きを検証できる。固定していないと、1 つをスライドすると全体もスライドしてしまうので、注意が必要である。基準となる部品を固定することを忘れないようにしよう。
アセンブリをする場合、立体空間にある形状を操作するという感覚が必要である。立体を創造して、線と線を合わせて2 次元図面を作成・設計していく場合の感覚とは異なり、立体と立体の位置を合わせるためには、どの面と面、軸と軸を合わせればよいのかといった立体的感覚を養う必要がある。2 次元CADで設計する場合には立体のイメージが必要となるが、3 次元CADで設計をする場合にも立体空間を把握する空間把握能力が必要となる。これは、3 次元CADでアセンブリ操作していくことで磨かれていく。空間把握能力を磨いてからでないと3次元CADができないということではないので、そこは心配しなくてよい。実際の組立て作業に似ている部分もあるため、実際の作業をイメージしてアセンブリしていくとよいだろう。