機械設計 連載「教えてテルえもん!3次元ツール習得への道」
2025.03.15
第9回 3次元CADでのサーフェスモデリング
いわてデジタルエンジニア育成センター 小原 照記
おばら てるき:いわてデジタルエンジニア育成センター長。自動車内装部品の設計会社を退職後、岩手県北上市を活動の拠点に10年以上、3次元デジタル技術関連の人材育成、企業支援に努め、学生から求職者、企業まで幅広く指導し、3次元から始めるDX推進活動を続けている。同センター長のほか、3次元設計能力検定協会の理事も務める。
はじめに
サーフェスは、面のみで構成された厚みゼロの体積情報のないデータであり、サーフェスモデリングとは、線と線を結んでできる面からなる表層だけのモデルを作成することである(図1)。有機的であり、寸法定義を求められる工業デザインや機械設計分野などで主に使用される。
図1 線と線を結んでできる面からなる表層だけのサーフェスモデル
3 次元CADで機械設計を始めた際は主にソリッドモデリングから行い、機械部品を設計するが、直線ではなく曲線があるデザイン形状をつくろうとした際にソリッドモデリングでは限界があり、サーフェスモデリングを行う必要性が出てくる。初めてサーフェス機能を使おうとした際に、ソリッドモデリングの違いを理解できておらず、うまく形状がつくれないことがある。今回はサーフェスモデリングの基本的な作成プロセスから活用用途について解説をしていく。
ソリッドとサーフェスの違い
3 次元CADで立体をコンピュータ上でモデリングする際、主に、①ワイヤフレーム、②サーフェス、③ソリッドの3種類の表現方法がある。
①ワイヤフレーム
ワイヤフレームは、点と線で3 次元の形状を表現するデータ形式である。データ構造が簡単なため演算処理や表示速度が速いという特徴があるが、形状の面や中身の情報を持たないため、形状の認識がしづらいというデメリットがある。ワイヤフレームをつくり、それに沿わせてサーフェスをつくったり、つないでふさぎソリッドをつくったりなど、ワイヤフレームは、サーフェスやソリッドの3次元モデルをつくる際に使うこともある。
②サーフェス
ワイヤフレームで閉じた領域を面で表現したものがサーフェスである。ソリッドでは処理できない複雑な形状のモデルをつくるのに向いている。例えば自動車のボディのような滑らかな曲面で構成された形状を作成することができる。ただし、厚みを持たない面で構成された立体で体積情報を持たないため、最終的には厚みを付けたり、中身を閉じてソリッドデータに変換するのが、3 次元CADでモデルを作成する際の一般的なアプローチ方法である。
③ソリッド
サーフェス(面)で閉じられた領域に中身の詰まった体積情報を持った立体がソリッドである。立体の内外を区別する情報を持つため、断面図、物体同士の干渉、体積、質量などを求めることができる。コンピュータ上での処理として、1970年代の初期にワイヤフレームで表現がされ、1980年代にサーフェスの表現ができるようになり、1990年代にソリッドでの表現が可能な3次元CADが普及し始め、今では、3つすべての表現ができる3次元CADが主流となっている(図2)。最近では、立体を三角面などのパッチの集合体で表現するポリゴン(メッシュ)も扱える3次元CADも増えてきている。
図2 ①ワイヤフレーム(左)、②サーフェス(中)、③ソリッド(右)
サーフェス機能を使用する場面
1. デザイン面の作成・意匠設計
ソリッド機能では、自由な曲面形状を作成するには限界がある。こだわったデザイン、面形状を作成する場合、サーフェス機能を使用することで1 面ずつ最適な手法を用いて曲面を作成することができる(図3)。
2.ソリッドの作成や修正に利用(図4)
(1)サーフェスを作成し、ソリッドをカット
サーフェスを使用してソリッドを分割することができる。設計した部品の分割や金型のキャビコア分割などに使用できる。
(2)押し出しなどの際に境界として利用する
スケッチ(プロファイル)を押し出して立体化する際にサーフェスの面を境界として利用できる。
(3)サーフェスの面の置き換え
ソリッドの面をサーフェスの面に置き換えてソリッドの形状を編集できる。
(4)サーフェスで形状を作成し、ソリッド化
サーフェスに厚みを付けることで体積情報を持ったソリッドを作成。サーフェスを接合して面で閉じられた形状にすることでもソリッド化できる。
3.インポートデータの修復
ほかの3次元CADのデータを取り込んできた際に、面と面が離れていたり、一部の面が消えていたり、ねじれていたりした場合の修復に使用できる。
4.CAM用データの作成
サーフェスで穴をふさぐ面を作成したり、角の面を延長したりすることで、効率的な切削加工用のCAMデータを作成することができる。サーフェスで面を作成することでCAD作業だけではなく、後工程のCAM作業の効率化にもつなげることができる。