機械設計 連載「教えてテルえもん!3次元ツール習得への道」
2025.07.15
第14回 機械設計者でも知っておきたい! CAMを使った加工プログラムの作成方法
いわてデジタルエンジニア育成センター 小原 照記
3.シミュレーション(図6)
図6 Fusion 360 のシミュレーション画面
設定した条件に合わせてツールパスを生成したら、目安となる加工時間、工具の動きや干渉、加工状態をアニメーションなどで確認する。問題がある場合は、ツールパスの編集作業を行う。
4.ポスト処理(図7)
図7 Fusion 360 でのポスト処理の画面例
ポスト処理では、CAMデータを工作機械に適したNCデータへ変換する。Fusion 360 をはじめとするCAMソフトウェアは、さまざまな工作機械に汎用的に対応するために、ツールパスデータ(工具経路)をCAMごとの独自の形式で保持している。
一方、工作機械には「制御機」と呼ばれる、NCデータを読み取って機械を動作させるプログラムが付属している。代表的な制御機がいくつかあり、制御機によってNCデータの記述方法が大きく異なる。作成したCAMのデータを、各制御機用にカスタマイズされたポストプロセッサを通して変換することで、各制御機に適したNCデータを生成できる。
以上で、CAMを利用したNCデータの作成工程は完了である。後は工作機械にNCデータを読み込み、工具や材料をセットして、加工を開始する。Fusion 360 では、加工者に指示するための加工指示書を出力することができる(図8)。
図8 Fusion 360 から出力した加工指示書の例
CAM作業に入る前に
加工とは、設計に基づく人工物を忠実につくり上げることである。切削加工といってもすぐに工作機械での加工に入るわけではなく、設計情報で指示された部品を機械加工するための製造設備、また材料、工具などの調達/手配可否と、事前に検証しなければならない業務がある。
製造可能と判断されたら、次はいかに加工精度を維持し、機械の段取りを効率良くできるかなど、機械加工工程を決める“工程設計”が行われる。
加工工程とその順番、加工機械を選定して工程が確定したら、機械加工の作業手順などを決め、製造ロット数、加工スケジュールの指示など、加工に必要な作業指示を決定する“作業設計”が行われる。
以上の流れに基づいて、NC工作機械を用いる場合にはCAMでツールパスを作成し、加工シミュレーション、ポスト処理を経て、工作機械のNCデータが準備される。NCデータの準備を終えたら、いよいよ実加工へと移行し、加工すべき材料と加工に使用する機械などの作業指示書の指示に従い作業を行っていく。そして、機械加工された部品は、検査工程に移行していく。
CAMには現場ノウハウが必要
加工の仕上がりは、工具の太さやツールパスなど、切削条件に大きく影響される。必要な品質、精度の仕上がりにするためには、切削条件や段取りなどの工夫、ノウハウが不可欠である。加工時間を短縮するためには、段取りや設定のパラメータの変更などが必要である。
CAMやNC工作機械があれば、熟練技能は必要ないということはなく、NC工作機械は、人間が指示入力をしなければ何もできない。技能は知恵を働かせ、創意工夫をすれば向上するが、CAM、NC工作機械は指示されたことしかできない。加工者は良い製品をつくり上げようと日々、努力しているわけである。
今回は、機械設計者の方々にも加工作業のことを知ってもらいたくCAMについて取り上げた。少しでも今後の業務のお役に立てば幸いである。