機械設計 連載「教えてテルえもん!3次元ツール習得への道」
2025.10.03
第17回 3次元CADにおける「スケッチ」をマスターしよう!
いわてデジタルエンジニア育成センター 小原 照記
スケッチを作成する
スケッチを描く平面を選択してスケッチを開始し、次に行うのが線を描くことである。作成したい立体形状に合わせて線を描いていく。作成した線を「プロファイル」と呼ぶ。基本的には、原点を基準にスケッチを描く。または、原点を基準に寸法(サイズ)を定義して位置を確定する。立体形状がある中でスケッチを行う場合には、立体形状の要素(エンティティ)を基準にスケッチの位置を決めることもある。
スケッチの機能として一般的に搭載されているものを今回は紹介していく。人間が図や絵を描く場合、1 本の鉛筆で、直線や円、楕円などを描くことができるが、3 次元CADのスケッチで線を描くには、直線を描く場合、円を描く場合でコマンド(命令)を切り替えていく。
円を描く場合、中心と直径を指定して円を描いたり、3 点を指定して円を描いたり、ソフトウェアによってさまざまなコマンドが用意されている。作成した点や線などの要素(エンティティ)を指定した距離で移動やコピーなどもできる。自分が描きたいスケッチに合わせてコマンドを選択していく(図3)。
図3 3 次元CAD「SOLIDWORKS」のスケッチ機能のメニュー例
線を描いてスケッチは終わりではない。「拘束」を定義する必要がある。拘束は、長さや距離、角度、直径、半径などの「寸法(サイズ)拘束」と水平や垂直、平行、直交などの「幾何拘束」の2 種類がある(図4)。
基本としては、始めに幾何拘束を定義し、スケッチを整えた後に寸法拘束を定義していく流れとなる。2 つの拘束を定義し、スケッチ空間上の位置とサイズを完全に定義していく。立体形状がある中でスケッチを描いている場合には、形状の線や面などの要素と拘束の定義を行うことができる。また、立体形状の線や面をスケッチ平面に投影させたり、平行移動させたり、立体形状の面や線と交差する線や点を作成したりすることができる。
多くのソフトウェアでは、完全に定義された線が色で識別できるようになっている。例として、始めは青色の線が完全に定義されると黒色になっていく。ユーザーは色が変わることで寸法拘束や幾何拘束の定義漏れがないかを確認することができる。設計するうえでの寸法の定義漏れや位置ずれなどのミスを防止することができる。ソフトウェアによっては、拘束に漏れがある場合、完全定義されていない線や点をドラッグすると移動することができ、拘束が足りない箇所を探すことができる。
定義済みのスケッチに拘束を定義しようとすると、重複していると警告メッセージが表示されたり、エラー画面が表示されたりする。ときに、意図していない幾何拘束が定義されていて、寸法拘束を定義しようとした際に重複の警告が表示されることがある。幾何拘束はユーザーが手動で定義できるほかに、自動で平行や直交などの定義が付与される場合があり、それによってユーザーが定義したい拘束が付与できない場合がある。例えば、直交な関係の線に対して平行の関係を定義しようとすると矛盾するため、エラーとなる。重複定義によるエラーがある場合には、不要な拘束が定義されていないかを確認し不要な拘束を削除する。
多くのソフトウェアでは、幾何拘束がスケッチ線の近くに小さいアイコンで表示されている。そのアイコンを選択して削除することで、幾何拘束の定義を解除することができる。最初は不要な幾何拘束を自分で探すのに時間がかかるが、経験を積むことで徐々に慣れていくだろう。
どうしても重複箇所を見つけられない場合には、一度スケッチを削除して、最初から書き直すのもよい。線の数が多いほど不要な拘束が付与されてしまうため、できるだけスケッチはシンプルにすることで回避ができる。
3 次元CADでは、2 次元CADのように正面から見た図をすべて1 つのスケッチに線を描く必要はない。始めに設計基準となる形状寸法がある場合、まずは、その輪郭をスケッチして立体化を行う。設計を進めていく中でほかの部品との干渉や軽量化のために形状を削りたい場合には、そのときに削りたい形状をスケッチして削っていけばよい。逆に強度を持たせるために補強の形状を追加することも後から可能である。
設計意図を考慮してスケッチを分けてシンプルなスケッチを描きながら形状を作成していくことで、後からの設計変更にも対応しやすくなる(図5)。例えば、形状の角の丸み(フィレット)や面取りなどをつくりたい場合には、スケッチで描かずに、立体化してから立体の角に対して丸み、面取りを行うことでスケッチをシンプルにでき、スケッチも描きやすく、設計変更にも対応しやすくなる。スケッチでフィレットや面取りをつくると、寸法を線の長さで定義している場合に、フィレットや面取りによって線が短くなることによる不具合が起きてしまう可能性もある。また、スケッチで作成したフィレットや面取りを削除したい場合に、一度、線を消して、延長させて角をつくり直す手間が発生する。
図5 左)1 つのスケッチにまとめてモデリングした例 右)スケッチを分けてシンプルにした例
立体上でフィレットや面取りを作成している場合、作業履歴が保存されているソフトウェアでは、作業を削除することで簡単にフィレットや面取りを削除し、元の角の形状に戻すことができる。もしくはフィレットや面取り部分の面を削除することで角のある形状に戻すことができるソフトウェアもある。一時的にフィレットや面取り作業した形状を抑制し、必要な場合、抑制を解除することも可能であったりもする。
どうしても複雑な形状の輪郭をスケッチで描かなければいけない際には、始めから複雑な輪郭を描こうとせずに、シンプルな輪郭を複数組み合わせて描き、不要な箇所を削除(トリム)しながら作成していくことで不要な拘束が付与されることを防ぎ、拘束を定義していった際の形状の崩れも起きづらく、重複定義によるエラーも起きづらい。