ペーパーレスは、コスト削減や業務の効率化を実現するだけでなく、環境に配慮したサステナブルな取組みにもつながる。ペーパーレスとは、紙(ペーパー)をなくす・減らす(レス)ことである。紙ではなくデジタルデータとして保存し活用することが、ビジネス面だけでなく、サステナブルな観点からも重要になってきている。
ペーパーレスは、ビジネス面において、紙の購入や印刷代、郵送代などにかかるコストを抑えることができ、情報管理では検索や共有が容易に行えることで業務効率を向上させ、コミュニケーションを活性化させる。大量の紙を保管する場所も不要になり、テレワークや多様な働き方に対応するうえでも、ペーパーレス化は必要不可欠である。
サステナブルな面においては、紙の使用を削減することで、森林の伐採や廃棄物を減らし、印刷や郵送時、ゴミ焼却時のCO2 排出量の削減につながり、森林保護、資源節約など環境への負荷を軽減することができる。ペーパーレスは、ビジネス面だけではなく、サステナブルな面でも効果があり、また、働く人たちのより良い環境づくりにもつながる。
ペーパーレスは、デジタル技術の発展や働き方改革、法改正の影響などにより、徐々に進んできてはいるが、日本では紙文化やハンコ文化が根強く残っているため、海外と比べると遅れているのが現状である。ペーパーレスが進みにくい理由には、経営者のITリテラシー不足や従業員のツールや業務フローが変わることへの不安、システム導入にコストがかかるなどといった課題がある。
これまでの紙の文化が当たり前だったため、ペーパーレスの働き方に抵抗を感じる人が、特に製造の現場には多いかもしれない。また、オフィスワークの人でも、業務を効率化すると自分の仕事がなくなるかもしれないといった不安を持つ人もいるだろう。しかし、今までと同じことをやっていては、環境の変化に対応できずに企業の存続が難しくなる。
ペーパーレスは一方的に推し進めるのではなく、働く人たちの理解と協力を得ることが何より重要である。ペーパーレスに取り組むことによるメリットを説明し実感してもらい、働く自分たちの負担やコストが減り、利益が上がり、給料が上がる。会社を存続させて活動していくためには必要不可欠であることを理解してもらう。そして、環境への配慮、サステナブルなモノづくりにつながることも理解し取り組んでいく。
ペーパーレスは、目標達成の手段であって、最終目標ではない。ペーパーレスの結果、最終的にどうありたいかを目標にする。目標設定を誤ってしまうとペーパーレスは達成しても、作業が増えてしまい社員が疲弊してしまう。
工数や費用面などから一度にすべてをペーパーレス化するのが難しい場合には、段階的に取り組んでいくことで、負荷を分散できる。まずは簡単にできることから進めていくとよい。例えば、図面や資料の電子データ化から始めるのもよい。まずは始めやすいところから取り組み、問題点や課題を見つけ、PDCAサイクルを回し、目標達成を目指す。大変ではあるが一番効果が出そうな箇所から始めてみるのもよい。
ペーパーレスを実施するにあたり、システムやツールを導入することも当然あるだろうが、システムやツールは、導入しただけではうまくいかない。社内での運用ルールを決めて、しっかりと管理していく必要がある。
モノづくりにおけるペーパーレスは、効率化、生産性向上、品質改善、コミュニケーションの円滑化などの多くの利点をもたらす。ただし、気を付けなければいけないこととして、データセキュリティ、プロセスの変革と管理、社員への教育などの課題もある。きちんと計画を立て実施しながら、モノづくりプロセスの革新と競争力の向上を実現していこう。そして、それがサステナブルなモノづくりへとつながっていく。
デジタル技術は日々、進化していく。技術の進化などを踏まえて、取組み方を見直していくことが重要である。筆者が書いた内容も数年後には古い間違った内容になっているかもしれない。常に最新技術をチェックしながら、サステナブルなモノづくりに取り組んでいってほしい。