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機械設計 連載「教えてテルえもん!3次元ツール習得への道」

2025.12.11

第20回 3次元ツールを活用したサステナブルなモノづくり

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いわてデジタルエンジニア育成センター 小原 照記

サステナブルとデジタルモノづくりの関連性

 サステナブルと3 次元ツールを活用したモノづくりの関連性を紹介する。

1.CAEとサステナブル

 サステナブルな設計では、製品に使用する材料の減量化が求められる。これは、CAEを活用することで検討をすることができる。製品に求められる強度や性能を満たす形状はCAEを使用して検討ができ、物をつくる前にシミュレーションすることで試作回数の削減が行える。

 試作回数を減らせることで、開発にかかる原材料の使用量を削減でき、廃棄量も減らすことができる。実際に物をつくってからの手戻りも減らすことができるため、開発期間の短縮にもつながり、物をつくる前に念入りな検証が行えることから、品質の向上、製品の長寿命化にもつながる。

 形状を解析するCAEだけでなく、トポロジー最適化やジェネレーティブデザインなどを利用することで、必要最小限の材料を使用した形状をコンピュータに計算させることもできる。

2.VR/ARとサステナブル

 試作回数の削減に関して言えば、VRやAR技術を活用することで、実際に物をつくることなく、仮想空間や現実空間に設計中の製品を映し出し、1/1 のスケールで形状をバーチャルで確認し、操作性や安全性などを検証することができる。

3.ビューワとサステナブル

 製造現場においては、ビューワなどを活用し、紙ではなくタブレットで作業指示や工程管理を行うことで、ペーパーレス化につながる。使用する紙を減らすことは、森林伐採、ゴミ焼却時のCO2の排出などの環境負荷を減らすことにつながる。設計は2 次元図面ではなく、3 次元CADでの設計が求められ、3 次元データで工程設計や作業指示を作成することで作業者の理解も深まり、品質向上にもつながる。組立手順の説明をARで映し出すことも可能である。

4.3Dプリンタとサステナブル

 製造方法として、つくる形状によっては金属や樹脂の塊を削るよりも、3Dプリンタを活用することで廃棄物の量を減らせる場合がある。切削では難しい複雑な形状も3Dプリンタでは製作可能なこともある。製品の材料使用料の削減、軽量化につながる。再生プラスチックの利用が可能なペレット式の3Dプリンタもあり、より環境に配慮したサステナブルなモノづくりが行える。

 保守パーツやオプションパーツの在庫の削減を考えたときにも、3Dプリンタは効果を発揮する。3 次元データがあれば、いつでも製作可能なため、余計な在庫を保管する必要がなく、保管場所も不要になる。輸送に関して考えた際に、各拠点に3Dプリンタを配置しておくことで、船や自動車で輸送する距離を減らすことでのCO2 削減につながり、輸送コストを抑えることもできる。

 今後、設計者は3Dプリンタでの製作を前提とした設計力、「DfAM(Design for AdditiveManufacturing:付加製造のための設計)」が求められる機会が増えてくる。

5. CAMとサステナブル

 部品を加工したい場合、3 次元データを活用すればCAMでNCプログラムを作成し加工が行える。CAMで事前に加工シミュレーションを行うことで加工ミスの削減ができ、廃棄量の削減や図面レスによるペーパーレス化に取り組むことができる。また、外部に加工を依頼する場合も、3 次元データで見積もり・発注ができるプラットフォームサービスがあり、見積もり依頼の図面や書類の作成が不要で、ペーパーレスで行うことが可能である。3Dプリンタで造形した物を切削加工し、より高精度な部品を作製したい場合にもCAMは活用ができる。切削量を減らし廃棄量を減らすことにもつながる。

6.3Dスキャナとサステナブル

 検査工程において、紙に記入して検査するのではなく、3Dスキャナを活用したデジタル検査を行うことで、ビューワ同様にペーパーレスにつながる。設計者は紙ではなく3Dスキャナで検査しやすい設計を行うことが求められる。

 また、3Dスキャナを使用して現物から3次元データを作成するリバースエンジニアリングは、部品の再利用検討への活用や治具製作、梱包材の設計など、さまざまな場面でサステナブルを意識した設計に活かすことができる。

7.3 次元CADとサステナブル

 上記のことを行うには、そもそも3 次元データが必要である。3 次元CADでの設計が必須となる。2 次元CADでの2 次元図面での設計では、真のサステナブル設計を実現することはできない。3 次元CADで設計することで、物をつくってからのミスを減らすだけでなく、ほかのデジタル技術と融合して大きな効果を発揮するのである。

 3次元CADには、3次元モデルを設計した後に2次元図面を作成する機能はあるが、投影図や断面図を配置し、寸法(サイズ)を付加するなどの情報を入力していくのは非常に手間であり、2 次元図面を作成するのには多くの労力が必要となる。3次元データを閲覧できるビューワを活用して、社内外で3 次元データを確認してデザインレビューを行ったり、さらには製造指示を行ったりするなど、紙を使わない3 次元データをフルに活用した効率の良いモノづくりが真のサステナブルなモノづくりである(図2)。
図2 3 次元ツールを活用したサステナブルなモノづくり

図2 3 次元ツールを活用したサステナブルなモノづくり

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