機械設計 連載「教えてテルえもん!3次元ツール習得への道」
2024.10.07
第1回 3次元ツールを活用したモノづくりのメリット
いわてデジタルエンジニア育成センター 小原 照記
おばら てるき:いわてデジタルエンジニア育成センター長。自動車内装部品の設計会社を退職後、岩手県北上市を活動の拠点に10年以上、3次元デジタル技術関連の人材育成、企業支援に努め、学生から求職者、企業まで幅広く指導し、3次元から始めるDX推進活動を続けている。同センター長のほか、3次元設計能力検定協会の理事も務める。
はじめに
近年、3次元CADや3Dプリンタなどの3次元ツール技術を活かした新しい設計・製造のあり方が注目されている。CADはComputer Aided Designの略称で、直訳すればコンピュータによる設計支援となる。ほかにも解析検証・シミュレーションを行うCAE(Computer Aided Engineering)や加工プログラムを作成するCAM(Computer AidedManufacturing)、3Dスキャナによる検査(CAT:Computer Aided Testing)やリバースエンジニアリングなどがある。設計は3 次元ツールの進展により、業務の効率化と品質の向上を図るとともに、関係者との情報共有と製品ライフサイクル全体での3 次元データ活用によるリードタイム短縮を図ることができる。
この連載では、「3 次元ツール習得への道」としてさまざまな3 次元ツールの使い方から活用事例を紹介していく。第1 回目の今回は3 次元ツールを活用したモノづくりのメリットについて説明する。
設計者にとっての3次元ツール活用のメリット
2 次元CADは製品形状を正面や横、上から見た投影図を平面上に表すのに対し、3 次元CADは製品形状を立体として表すことで形状の認識が容易に行える。設計者以外の現場作業者、営業マンなどが形状を理解することで多くの人から意見をもらえ、より使いやすく、つくりやすい製品、売れる製品を設計できる。
3 次元CADのメリットは、設計者がつくりたい製品を立体で表すことで、誰でも形状を簡単に把握できるほか、立体でつくることで体積や表面積が確認でき、材料指定によって質量や重心を求めることができるという点である。質量がわかることで軽量化の検討ができるほか、重心を求められることで機構設計や治具設計する際に役立てられる。このほかにも図1 のように、3 次元CADでモデリングした部品をバーチャル上で組み付けて干渉の確認や機構の確認もできたり、組立てや分解のシミュレーションを行えたりもする。実物では確認しづらい断面形状などの確認も簡単だ。
図1 (左図)3次元CAD「SOLIDWORKS」での干渉確認、(右図)3次元CAD「Fusion 360」での断面確認 (画像提供:筆者)
作成した3 次元モデルはCAEソフトにインポートし、強度の検証や熱、磁場、流体などのさまざまな解析によって、つくるうえでの不具合を事前に検証できる。最近は3 次元CADソフトの中にCAE機能が搭載されているものもあり、データ変換をすることなくCAEを行い、CADの機能に戻って設計変更し、CAEをシームレスに行える。
CADやCAEで多くの検証を行ってから、持った感触やスケール感などを実物で確認したい場合には、3Dプリンタを使えば、3 次元データをそのままの形で造形できる。材料は樹脂や金属など、多種多様なものを使えるようになっている。
製品の3 次元データを活用して金型設計や治具設計を行い、生産設備や工場のレイアウトなどを3 次元で検討することで、よりわかりやすく多くの人と設計を進められてコミュニケーションが向上、さらに品質の向上へとつながる。最近では、機械・電気・制御が1つの3次元データでつながりメカ制御連携ができて、生産設備やロボットの仮想での動作検証が可能になっている。以上のように、設計する際の3次元CADの使用には多くのメリットがある(図2)。