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機械設計 連載「教えてテルえもん!3次元ツール習得への道」

2024.10.07

第1回 3次元ツールを活用したモノづくりのメリット

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いわてデジタルエンジニア育成センター 小原 照記

組織として3次元ツールをうまく活用するために

 3 次元CADなどの新しいシステムを導入する際、従来のやり方にこだわってしまうと、何も変わらないどころか、3 次元データをつくる手間だけが増え、投資が無駄になることがある。新しいツールの導入には、新しい業務フローが必要なのである。3 次元ツールをうまく活用した業務フローを作成することで図5 のように、設計から製造にいたるさまざまな業務関連部署が同時並行的に仕事をし、量産までの開発プロセスをできるだけ短期化するというコンカレントエンジニアリングが可能となる。3 次元ツールの活用を部分最適化ではなく、全体最適化するという意識で取り組むことが大事である。
図5 3 次元設計によるコンカレントエンジニアリングの実現

図5 3 次元設計によるコンカレントエンジニアリングの実現

 3 次元CADを、ただ立体形状をつくるためだけの道具と考えていると、最大限の効果は発揮できない。3 次元のメリットを最大限に得るためには、3 次元データを設計部門限定の閉じた環境だけで活用するのではなく、全社で3 次元データが扱えるシステムを構築すべきであり、同時に「図面でないと業務が回らない」といった従来のやり方を見直さなければならない。

 本来、営業や購買といった技術部門ではない部署こそ、3 次元のメリットを享受できるはずである。しかし、新しい物への拒否反応や、3 次元データ活用への理解不足などが足かせになるケースも多く見られる。そうならないためにも、データ活用部門の3 次元に対する理解度を上げ、積極的に3 次元データを活用してもらう努力が必要である。こうした環境整備は非常に苦労するところだが、いったん3 次元データ活用の流れができてしまえば、今まで手間のかかっていた作業が軽減され、スピードや品質の向上が少しずつ実感できるようになるはずである。

 3 次元の最大のメリットは、誰でも形状を認識できて皆でモノづくりができることであり、モノづくりにかかわる全員が3 次元を活用することでその価値を最大化できる。そのために必要なのは、3 次元CAD導入を単なるソフトウェア導入として捉えるのではなく、1 つのプロジェクトとして全体で動くことだ。例えば、各部門からリーダーを選出してプロジェクトチームをつくって活動したり、定期的に改善活動を行う機会を設けたりといった工夫が必要である。

 また、自社で3 次元のメリットを最大限に引き出すためには、自社に適したツールを使う必要がある。3 次元CADといってもさまざまなソフトウェアがあり、CAEやCAM、3Dプリンタや3Dスキャナなど、関係するツールや設備などが数多い。技術やツールの進化により、3 次元のメリットは今後さらに大きなものになっていくと考えられる。ここで注意すべき点は、設備中心の考え方ではなく人を中心に、人が喜ぶことをする、というのが、モノづくりで最も重要である、ということを忘れてはならない。ツール導入やプロセス改善を進め、全社をあげて3 次元ツール活用に取り組んでいただきたい。

 3 次元ツール活用を社内に広めていくうえで重要なのは、皆が喜ぶようにすること。3 次元ツール導入のメリットをはっきりと示さないままの状態では、業務量が増えてしまった場合、現場の設計者を不安にさせてしまう。2 次元ではなく3 次元で設計すれば、現場の作業がより楽に、よりわかりやすくなる。このことを現場に理解してもらえるよう、努める必要がある。3 次元ツール導入が現場の皆が喜ぶことにつながるという認識を広めることが、何よりも大切となってくる。

 必要なのは、(When)いつまでに、(What)何を達成し、(Why)なぜ達成するのか、(How)どのように行うのかを明確にして、管理、評価していくことである。例えば、Before/After の姿として、設計スピードアップ、不具合やミスの低減、品質向上などの「効果の明確化」、現在の業務プロセスの中にどのように組み込まれるのか、誰の作業がどのように変わるのかなどの「役割の明確化」、誰が評価を行い、継続的な運用を行うか、いつ、どのタイミングで、どのような評価を行うのかといった「運用の明確化」。これらについてしっかりと示し、スケジュールを決めていくのである。

 IoTやAI、ロボットなどが活躍するDX時代では、決してデジタル中心で物事を考えるのではなく、人はより人と向き合い、人が喜ぶことを考え、行動していくことが何よりも重要である。3 次元ツールを習得し、皆が喜ぶ、より良い設計をしていこう。
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