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機械設計 連載「セラミックス材料の基礎と活用の要点」

2026.03.10

第3回 セラミックスの特性

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技術士事務所 ALEITA(アレイタ)福井 剛史

機械特性 

 セラミックス材料は耐熱性や耐食性に優れ、金属やプラスチックでは適用できない環境でも使用できる。一方で「脆(もろ)い」という特性により、構造材料としての用途はもちろん機能材料においても適用に制約がある。ここでは、セラミックスの脆性(ぜいせい)を階層構造の観点から整理する。 

 脆性を改善した代表例としてジルコニア(ZrO2)にY2O3を添加した系がよく知られており、応用例として人工歯などがある(図3)。以下にはセラミックスの脆性についてその基本的なメカニズムを述べ、その後、このZrO2にY2O3を添加した系について再び簡潔に述べる。
図3 人工歯の外観

図3 人工歯の外観

 図4 にセラミックスと金属の典型的な応力-ひずみ線図を示す。セラミックスは直線の傾きが大きく、直線領域の終端でほぼ破壊に至る。これは、弾性領域においてもひずみが小さい「剛(かた)い材料」であること、また金属のような塑性変形をほとんど伴わず破壊に至る「延性に乏しい材料」であることを意味する。これら2 つの特徴を階層構造から解釈する。
図4 応力-ひずみ線図

図4 応力-ひずみ線図

 まず化学構造について、セラミックスは主にイオン結合や共有結合からなる。このイオン結合や共有結合は結合エネルギーが高く弾性率の高さにつながる一方、原子間の安定位置が定まっているため原子面がわずかにずれるだけでも不安定化しやすい。そのため塑性変形が生じにくい(転位が動きにくい)。一方、金属(金属結合)では陽イオンの配列を自由電子が包み込み、原子面がずれても局所構造が維持されやすい。このため塑性変形が進行しやすい(転位が動きやすい)。

 次に微構造では、微小な亀裂の存在が重要となる(図5)。上記の通りセラミックスでは塑性変形が生じにくいため、亀裂先端が塑性的に鈍化せずに鋭い先端形状が保たれる(曲率半径ρは小さくなる)。結果として応力が亀裂先端の局所に集中しやすくなる(応力拡大係数Kの増大)。一方で、変形によりエネルギーが消費されづらく(塑性変形によるエネルギーの散逸も起こりづらく)、金属材料とは異なり、あるとき(臨界値を超えたとき)に急速に亀裂が進展する(破壊靱性値KICが減少する)。
図5 亀裂終端における応力集中と相転移による亀裂伝搬抑制についての模式図

図5 亀裂終端における応力集中と相転移による亀裂伝搬抑制についての模式図

 このようにしてセラミックスは高い剛性を示す一方で、脆性を示す。 

 上記のZrO2は、室温での安定相である単斜晶が高温安定相の正方晶に比べて約3~5%大きな体積を持つが、Y2O3 などを添加すると体積の小さい正方晶を室温まで保持できる。亀裂が進展(上記の亀裂先端に応力集中)するときには正方晶から単斜晶への相の変化(無拡散型の相変態、マルテンサイト変態)を引き起こす。この体積膨張による圧縮応力を利用し亀裂の進展を抑制する(図5)。

電気特性

 セラミックス材料の電気特性は極めて幅広い特性値の範囲を持つ。一例として、伝導性について初期の碍子などの絶縁体から、その後の半導体、超伝導体に至るまで、その範囲は広がっている。しかし、電気は「あからさまには目には見えづらい」こともあり、構造と特性との関係を捉えづらい面がある。ここでは電気特性の中でも「半導性」に注目し、階層構造との関係を示す。 

 半導体構造を持つセラミックスとして酸化亜鉛(ZnO)にBiO2などを添加した材料が知られており、応用例としてバリスタがある(図6 左上)。バリスタとは、通常は電気を通さず、落雷など高電圧印加時に電流を流す非線形抵抗素子であり、電気回路の保護に用いられる。 
図6 ZnOバリスタの外観、微構造、バンド構造の模式図

図6 ZnOバリスタの外観、微構造、バンド構造の模式図

 以下にはこの材料の化学構造、結晶構造、微構造の順に電子に関係する構造を簡単に述べる。 

 まず化学構造について、原子軌道はエネルギーの低いものから高いものへ層状に並んでいる(前回参照)。そのため、電子のエネルギーを縦軸にとると、軌道は「飛び飛びのエネルギー準位」として横棒を順番に描くようにして表現できる。ここで重要なのは、これらの軌道を粒子ではなく「波」として扱うことである。波であれば重ね合わせることが可能となるためである。ただし、電子は同じ状態には同時に存在できない点には注意する(パウリの排他原理)。 

 次に結晶では、電子が同じ状態には存在できないことを背景として、原子数が多数(例えばアボガドロ数。化学の基本単位。1023 個オーダー)に達したとき個々の原子軌道はわずかずつエネルギーが異なる多数の準位へ「連続的に分裂」する。この軌道の集合を「バンド(band)」と呼び、単一の軌道で表される「ボンド(bond結合)」と区別する。模式図では長方形の帯として示されることが多い*3(図6左下)。バンドのうち電子で満たされた領域を価電子帯、電子が励起されて占有できる空き状態のある領域を伝導帯と呼び、両者の間に電子状態が存在しないエネルギー幅が生じる場合、それを「禁制帯(バンドギャップ)」と呼ぶ。共有結晶、イオン結晶にはバンドギャップが現れ、金属結晶では通常バンドギャップはない。 

*3 :ただし、すべてのエネルギー準位に同数の電子状態があるわけではない。原子軌道の重なり方や対称性によって、各エネルギーに存在する状態の数は異なり、典型的にはエネルギーに対して(長方形ではなく)山型の分布をとる。状態密度(Density of States:DOS)

 次に上記の「電子の席」(バンド)が電子で「どこまで占有されているか」について概説する。電子の占有の確率は絶対温度0 K ではあるエネルギーの位置(フェルミ準位)より上では0、下は1 と急激に変化することが知られている(フェルミ-ディラック分布)。しかし、実際は0 K より高温であることがほとんどであるため、電子の占有確率は0 から1へと滑らかに変化する(同上)。しかし、熱力学的に「電子がどこまで詰まっているか」をおおよその基準として議論するときには、依然としてフェルミ準位を参照できる(図6左下)。この前提でコップに入った水の水面に例えられることも多い。なお、上記ZnOでは粒界はフェルミ準位がバルク(界面以外)のZnO粒子より低い(図6左下)*4

*4 :格子乱れや第3 成分添加による不純物準位が多く、金属のようなバンドとなり、かつ電子を補足しやすいためである。 

 ここで異なる材料を「接合」するとき(図6左下から中央下)には、両者のフェルミ準位が一致するように電荷が移動すると考える。このとき、バンドの位置自体は各材料の結晶構造に由来し、基本的には変わらない(図6中央下)。このため、バルクから粒界へ向かって上り坂の構造となり電子は流れにくくなる(図6中央下)。しかし、高電圧が印加されると、バンドが非対称に大きく傾斜し、粒界からバルクへ向かって電子がトンネル効果によって粒界を通過できるようになる(図6右下)2)。 

 次回は材料の構造をつくるプロセスの基礎について述べる。

参考文献
1 )守吉佑介、ほか:セラミックスの基礎科学、内田老鶴圃(2004)、p.153
2 )北條順一:セラミックス材料化学、丸善出版(2005)、p.179
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