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機械設計 連載「教えてテルえもん!3次元ツール習得への道」

2024.12.18

第5回 3次元CADでの設計変更

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いわてデジタルエンジニア育成センター 小原 照記

おばら てるき:いわてデジタルエンジニア育成センター長。自動車内装部品の設計会社を退職後、岩手県北上市を活動の拠点に10年以上、3次元デジタル技術関連の人材育成、企業支援に努め、学生から求職者、企業まで幅広く指導し、3次元から始めるDX推進活動を続けている。同センター長のほか、3次元設計能力検定協会の理事も務める。

はじめに

 設計業務において、設計変更をしなければいけない場面があるだろう。2 次元CADで設計変更を行う場合には線を消したり伸縮したりして、正面図、平面図、右側面図などの各図を修正していく必要がある。3 次元CADの場合、コンピュータ上に作成した仮想3 次元モデルの立体の形を修正していく。修正方法には面を直接伸縮したり削除したりする方法もあるが、3 次元CADは一般的に、作成の際に入力したパラメータ値の変更で形状変更ができる。2 次元CADのように正面図を修正したが、平面図を修正し忘れたなどの心配はない。3次元CADで作成した3次元モデルを、2次元図面に投影して作成した場合、3 次元モデルを修正すると2 次元図面も更新される。つまり、図面の修正忘れや間違いが起こらないのである。

 ここで重要になってくるのが、パラメータのつけ方である。例えば図1 の左側は、設計基準である穴の中心からもう片方の穴位置の寸法を定義しているが、これでは設計変更で板の長さを短くしても穴の位置は基準位置から短くならないため、板に穴があかない。一方、図1 の右側のように、板の端から穴の位置の寸法を定義している場合、設計変更によって板が短くなっても、短くなった板の端から寸法が定義されているため、板に穴があく。以上のように、3 次元CADで設計を進める際には、設計変更を考慮したうえで寸法の定義の仕方に気を配る必要がある。
図1 設計基準から寸法を定義した場合(左)と、設計変更を重視して寸法を定義した場合(右)

図1 設計基準から寸法を定義した場合(左)と、設計変更を重視して寸法を定義した場合(右)

 業務で3次元CADを使用していると、思ったとおりに形状変更がされなかったり、エラーが起きてしまったりして、先に進めなくなってしまうことがある。今回は設計変更によるエラーが起きる原因と対処法を紹介する。なお、本稿では主に作業履歴が保存されるヒストリーベースの3 次元CADを用い、定義したパラメータの値を変更して形状修正を行う、“パラメトリックモデリング”を題材とする。

設計変更した際にエラーが発生する原因

 一般的に3次元CADで形状を変更した際、エラーが生じる原因は「参照要素が不明になる」というものがある。

 特に意識することはないかもしれないが、3 次元CADを操作して立体形状を作成している際、内部では作成された面や線(エッジ)、点に対して自動的に“ID”が付与される。このID のことを「内部ID」と呼ぶ。「面1」、「面2」、「エッジ1」、「エッジ2」といったような名前が付与され、作業を進めていく中で3次元CADが「この寸法はエッジ1 を基準につけられている」、「面2 を基準に押し出しが行われている」、「エッジ2 にフィレットをつけている」などの情報を内部的に記録していくイメージだ。

 3 次元CADは「ここの形状のこの箇所にフィレットをつけている」のような“形状での認識”ではなく、「『エッジ2』という内部ID を持つ部分にフィレットをつけている」のように、要素(エンティティ)と作業・フィーチャを紐づけて記録している。そのため、すでにスケッチで描かれている線を消して、再度同じように(同じスケッチ形状で)描き直したとしても、内部IDが異なるため整合性がとれずにエラーとなる場合がある。

 図2のような状態から、例えば「面2」や「エッジ2」が削除されてしまうと、それを参照して作業していたはずの押し出しができなくなったり、フィレットがつけられなくなったりと、エラーが起きてしまう。参照している線や面がなくなってしまい、パラメータ値の変更によって参照したものにエラーが起きると、芋づる式にエラーが連動してしまう。そのためできるだけ芋づる式にせずに、エラーが出る可能性があるような形状、要素とは参照関係をつくらないことが重要となる。
図2  3次元CADが内部的に記録している「要素(エンティティ)」と「作業・フィーチャ」の関係を示したイメージ図

図2  3次元CADが内部的に記録している「要素(エンティティ)」と「作業・フィーチャ」の関係を示したイメージ図

エラーが起きにくいモデリング方法

 エラーが出る可能性があるものとして、設計変更が入りやすい箇所があげられる。設計変更により大きさや位置、形状が変わることで、参照要素がなくなってしまう可能性がある。できる限り、設計変更が入りやすい形状との参照関係は避けるべきである。どうしても参照関係をつけたい場合は、できるだけ最後につけると、エラーの連動が少なくて済む。

 はじめは別々のボディで形状を作成しておき、最後の方でブーリアン演算(組合せ)として「和(結合)」や「差(切り取り)」を行うことで、履歴が芋づる式になるのを回避できる。図3 のように形状A、B、Cをつくる際、最初に平面から形状Aをつくって、その形状Aの面にスケッチを描いて形状Bをつくり、形状Bの面にスケッチを描いて形状Cをつくった場合で考えてみる。形状Bを削除してしまったり、形状Bでエラーが発生してしまったりすると、形状Cに影響が出てしまう。なぜなら、形状Cは形状Bの面に描いたスケッチをもとにリンクしている(参照関係がある)からである。
図3 エラーが連動する場合としない場合の比較

図3 エラーが連動する場合としない場合の比較

 対処法は、平面A、B、Cをはじめにつくることだ。形状Aは平面Aを押し出してつくり、形状Bは平面Aにスケッチを描き、平面Bまで押し出し、形状Cは平面Bにスケッチを描き、平面Cまで押し出す。すると、仮に形状Bが削除されたり、エラーが起きたりしても、形状Cは形状Bとはリンクしていない(参照関係性がない)ため、エラーの連鎖反応が起こらない。このように、モデル形状の要素ではない、平面や軸、点などを基準要素として利用することで、設計変更によるエラーは少なくなる。

 要素と関係付ける場合には、選択する要素は“点よりも線、線よりも面”を利用すると、エラーが起きにくくなる。なぜなら、点や線はフィレットや面取りなどが追加されると消えてしまうため、参照できなくなる可能性が高いからである。フィレットや面取りなどは、作業の最後の方に行うことが望ましい。また、フィレットや面取りをする前にアセンブリなどを行う場合、注意が必要である。アセンブリをする際に角のエッジ(線)を選択していると、形状にフィレットが入って要素がなくなるとアセンブリにエラーが生じる。図面作成では、点よりも線を選択する。アセンブリをする際は形状の面ではなく、基準軸や基準平面、座標軸などを作成して、そこを基点に組み付けることで設計変更によるエラーを回避する方法もある。
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