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型技術 連載「巻頭インタビュー」

2025.04.02

長年培った金型設計・製作技術を強みに未踏の領域ギガキャストに挑む

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リョービ㈱ ダイカスト企画開発本部 研究開発部 部長
新田 真氏

Interviewer
日産自動車㈱ 
パワートレイン・EV コンポーネント生産技術開発本部
素形材・成形技術開発部 型技術グループ 課長代理
佐藤武志氏

量産を手がけるなら海外

御社がギガキャストへの参入を決めた背景について教えてください。

ご存じのとおり、ギガキャストに関しては中国が大きく先行しています。今回当社がギガキャストに踏み出したのは、技術的にも時間的にもこれ以上中国に突き放されるともうギガキャストには挑戦しない方がいいと思ったからです。やるなら今が最後のチャンス。今やらないならもうやるべきではないと考えました。ですから、本来は顧客企業と協調できる見通しがあって投資したかったところですが、先行投資ということで参入のタイミングの限界点を判断して経営陣に決断をしてもらったのです。

そこで投資を判断したのはすごいですね。

ギガキャストは社長を含む当社の経営陣もずっと気にしていて、参入に関する議論が続いていました。最後に決断してもらえたので良かったです。われわれの企業規模を考えると、今回の新工場立ち上げは約50 億円ととても大きな投資。競合相手となる中国はかなり強敵で、コスト的にも実績的にも彼らの方が上なのでこれからが正念場です。覚悟をもってやらないといけないというのが正直なところです。

先ほど「現時点ではギガキャストの量産は計画していない」とのお話がありましたが、この部分についてもう少し詳しく聞かせてください。

国内のギガキャストは基本的にOEM(自動車メーカー)が内製で生産することが主流だと思っています。そのため、当社としてはお声がけをいただくことがあればお客さまの現場に入って、ギガキャストで生産する部分の試作や技術サポートについて一緒にやりましょう、というスタンスだと思っています。

おそらく自動車メーカーも車両工場に鋳造工場をつくっていこうという流れになってくるでしょうね。

日本のギガキャストの行方もOEM がどれだけギガキャストを使うのかにかかっています。電動車でプラットフォーム(骨格)の共有化が実現して、そこでギガキャストが有効となればそれなりに数も出るかもしれませんが、既設の組立ラインやサプライチェーンの関係もあるので、従来のやり方が大きくひっくり返ることはすぐには起こらないでしょう。材料の価格や供給リスクも考えると国内で量産というのはなかなか難しい。もし量産をするとなればやはり海外かなと思います。具体的にそれがどこかというのはわからないですが、中国に後発で参入するのは相当厳しいと思います。そうなると欧州か米国かということになるのでしょうね。

ダイカストの出来映えの7割は金型で決まる

中国は国のお金がジャブジャブ降りてきて勢いもすごい中で型締め力1万t を超えるものも手がけていますが、あれが正解かはわからないですよね。

そうなんですよ。彼らは自動車のプラットフォームを丸ごとギガキャストでつくることを検討していますが、そこまで一体成形するメリットがあるのかという疑問も感じていて、例えば3分割とか良い具合にバランスのとれたやり方もあると思っています。そうなると1万t を超えるものはわれわれとしては正直どうかなと。6, 000~9, 000 t ぐらいの範囲が一番お手頃なサイズ感だと考えています。当社が6, 500 t の機械を導入すると公表したときに、中国のある企業の方から「なんでそんな小さな機械を入れるのか」と言われました。「それはもうギガキャストじゃないよ」と(笑)。彼らは9, 000 t からがギガキャストという感覚のようです。ただ、当然ながら大きさを競っているわけではないので、当社やお客さまが扱いやすい使い勝手の良いサイズでつくれればそれが一番良い。いずれ9, 000 t という話もあるかもしれませんが今は6, 500tで頑張ってみて、その先はまた将来考えるという感じです。

あとは、そのサイズの型で組み合わせていくのかといったところで型設計が腕の見せ所だと思います。

おっしゃる通りです。私の個人的な見解ですが、ダイカストの出来映えの7割は金型で決まる。だからギガキャストも金型をいかにものにするかに尽きると思っています。幸い当社は金型をほぼ内製で賄っているので、そこで培った金型設計・製作の技術を最大限活用していくことがギガキャストの領域における当社の強み。とはいえ経験値はほぼゼロなので、今は素直に中国をメインに学ばせていただいて、いずれお客さまに「リョービを選んでよかった」と言っていただける当社のオリジナリティを発揮していきたいですね。

米中に対抗するには攻めた考えも必要

中国ではシャオミまでがギガキャストをやっていますよね。しかもYoutube でその製造工程を全部見せている。すごいなと思います。

自信があるんでしょうね。でも金型は限られた金型メーカーが引き受けていて、彼らが方案の基本を決めていることが多いようです。オープンにされている金型の方案を見ると何となくこの金型メーカーなのかなとわかります。そう考えると、技術を握っているのはOEM ではなくて金型メーカー。彼らがいろいろな企業の仕事を請け負ってどんどん実力をつけていく。OEM も鋳造の方法を研究しているのでしょうけれど、そこは実は鋳造機メーカーが頑張っていたりして、意外とわれわれが対抗すべき相手は鋳造機メーカーであり、金型メーカーなのかなとも思います。

不良率はどのくらいなんでしょうね。特に何度も打って金型が傷んできたときこそ技術が必要で、どのように保全して不良率を下げていくのか。

保全に関しては、傷んだら傷んだなりに手当てして寿命まで使うという考え方と、傷んだら丸ごと交換するという考え方がありますよね。私が中国へ赴任していたときの経験で言えば、中国の鋳造機メーカーはもともと射出成形から始まったところが多くて、中国の射出成形の世界では故障したり顧客からクレームが来たりしたら機械を丸ごと総取り替えというのが当たり前でした。機械が大量に出るから安くつくれるので、直すより取り替えた方が効率が良いというわけです。そういう意味では、金型も場合によっては「壊れたら直さず新しいものに替える。そうすればたくさん出るので安くつくれてなお良い」という考え方もあるのかなとも思いました。もったいないし、地球にはまったく優しくないですが(笑)。

直すより取り替えた方が良いというのは、日本の製造業にはまずない発想ですね。

あとは不良率に関して言えば、良品・不良品が製品機能の満足・不満足と必ずしもイコールではないということがありますよね。日本の場合は当然ながら安全と品質の保証の重要性が高いので、製品機能よりも高いレベルに製品の良否判断の基準がある。一方で、この差が大きすぎると過剰品質になる。ただ、特にギガキャストはいわば複数部品の集合体であるわけですから、当然この差がかなり大きなコストの差につながってきます。
 これについては、議論が必要であることを前置きしますが、技術的な根拠に基づいて安全と品質を保証する一方で、ある程度攻めた考え方も取り入れないといけないのかなと思います。テスラや中国勢に日本が遅れをとっているのは、彼らがこの部分で大胆に割り切っているということの影響が大きい。ただ、実際にそれを実践するとなると難しいのですが。

おっしゃる通りなかなか難しい。永遠のテーマと言えるのかもしれません。
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