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プレス技術 連載「モノづくり革新の旗手たち」

2025.03.27

長年培った金型技術を基盤に技能・技術集団を形成 顧客の課題解決に貢献する

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㈲エーワン· プリス 代表取締役
遠藤慎二氏

最近はどんな医療機器を作っていますか。

医療機器といっても、当社が作っている「鋼製小物」と呼ばれる器具がメインです。メスや鉗子、各種の治具や留め金など金属で作られたツールを言いますが、医師の要望でほぼオーダーメイド、数量的に少ないにも関わらず種類· バリエーションが無数にあるのが特徴です。例えば、最近当社が力を注いでいるものに鼓膜切開用のメスがあります。非常に繊細な作りをしており、刃自体は両刃ですが、ちょうど日本刀の切先のように途中から刃先の角度が変わる形状になっています。角度が緩いものから強いものまで、その違いで10 種類以上のバリエーションがあります。製造は、柄の部分など大まかに機械加工で作り、最後に刃を手作業で仕上げるという工程になります。

医療機器で成功する秘訣は。

個別で対応していたら儲からないので仲間を集めて取り組むことです。地元燕市でも医療機器研究会を立ち上げ、現在30 数社が集まって活動しています。案件は品物ごとにシェアしていきます。例えば、今回はA 社(当社)、B 社(磨き)、C 社(旋盤)が担当する。そういうユニットを一つだけでなく、同時並行で複数流していくイメージです。メンバーには、医療機器製造販売業の資格を持ったコーディネータもおり、作ったものを登録して販売できる体制をとっています。未登録の場合、医師が自己責任で使うことになりますが、それでは外販できません。外販できれば、他の医師からの注文にも応じることができ、その治療法が広まるほど収益性が高まります。

営業はどうされていますか。

各種専門学会や展示会に参加しています。関係者とつながりができることが狙いですが、医者から直接「作ってほしいものがある」とお声掛けいただいています。そのほか地元自治体などに寄せられた技術相談を研究会を通じてシェアしています。例えば、燕三条で言えば、燕市三条市や燕三条地場産業振興センターが窓口となって外部からの医療機器の相談を受けています。自治体や公益法人と一緒にやることで信用度が上がり相談や引き合いが来やすいというメリットもあります。

技能標準化で収益性を改善

医療機器製造の課題は。

従来どおりの作り方をしていては儲からないことです。鋼製小物で言えば、超多品種少量で仕上がりに厳しいにもかかわらず、製造単価が安く、輸入品のレベルも上がってきています。そのため後継者を育成しようにも誰もやりたがらず、年々作り手が減っています。事情は当社も同様で、鼓膜切開用のメスの刃付けはこれまで私しかできませんでした。そこで燕三条地場産業振興センターの協力のもと、誰でも効率よく作れる方法を確立しようと取り組んでいます。鼓膜切開用メスでは、切先の角度の作り込みがネックとなっていましたが、3D プリンタを使って専用の治具を製作して解決しました。治具に刃付け前のメスを当て込みながらルータで削れば誰が作っても同じ形状が作れます。治具の作成費用もほとんどかからないため、多品種にも対応しやすくなります。
鼓膜切開用メスと刃付け用治具

鼓膜切開用メスと刃付け用治具

手作業による鼓膜切開用メスの刃付け

手作業による鼓膜切開用メスの刃付け

NC 化はできませんか。

例えば、鼓膜切開用メスの刃のサイズは刃渡り2.0、幅0.5、厚みが最大0.3、やり形状の両刃。しかも切先の角度は医師によって異なるので実際にはこのサイズもバラバラです。これをNC 化しようとすると膨大な手間となり、製造機械も高価です。だからこそ手仕事で作ってきましたが、できる人が育つまでに時間掛かっていました。今後はピンセットや鉗子などメス以外でも同様に専用治具を作っていく予定です。
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