機械設計 連載「教えてテルえもん!3次元ツール習得への道」
2024.10.16
第2回 3次元CADでのモデリングの基礎
いわてデジタルエンジニア育成センター 小原 照記
おばら てるき:いわてデジタルエンジニア育成センター長。自動車内装部品の設計会社を退職後、岩手県北上市を活動の拠点に10年以上、3次元デジタル技術関連の人材育成、企業支援に努め、学生から求職者、企業まで幅広く指導し、3次元から始めるDX推進活動を続けている。同センター長のほか、3次元設計能力検定協会の理事も務める。
はじめに
機械設計とは、設計仕様を決めてその仕様に基づいて設計対象物の検討を行い、構造や材料、形状を決定していく作業である。またCAD(Computer Aided Design コンピュータ支援による設計)とは、この機械設計作業を支援するツールである。パソコンなどで電子的に処理する環境がなくCADもない時代は、紙の図面で設計作業を行っており、3次元の形状をJISなどのルールにのっとり2 次元の線分で表現して設計していた。紙図面は定規と鉛筆を使って手で線を描くため、鉛筆の太さより細い精度は出せないという問題や、1 本1 本いちいち描いたり消したりして修正や削除に非常に手間がかかるという問題があった。
その後誕生した2次元CADによって紙図面の作業を電子化することで、精度が向上し編集・削除などの作業が効率化した。しかし、3 次元の物体を仮想的に2 次元で表現して処理する点に変化はなく、形状が複雑な場合、2次元図面から3次元形状への転換は難しいままだった。後に生まれた3次元CADは、単に紙の作業の電子化ではなく3次元の形状情報をそのまま取り扱えるように開発された支援ツールである。3 次元CADで作成した形状のことを「3次元モデル」や「3次元データ」などと呼び、3次元モデル、3次元データなどを作成することを「モデリング」と呼ぶ。3 次元の情報を持っているので体積や重量が検討でき、部品間の干渉部分の確認が行えるなど、多くのメリットがある。
3 次元CADを使い始めた頃は、自分が設計したい形状について、どの機能を使ってどういう手順でつくったらよいのか、悩まれることだろう。紙図面や2次元CADとは特性の異なる3次元CADを使うには、従来の延長ではなく新しい考え方で取り組む必要がある。今回は2次元CADとの考え方の違いや、多くの人がつまずきやすいポイントなどに触れながら、3 次元CADのモデリングを習得していく方法を紹介する。基本を理解して3 次元CAD活用の第一歩を踏み出そう。
2次元CADと3次元CADとの設計基準の違い
2 次元CADは、紙や鉛筆などを使って部品や製品を正面や横、上から見た図などを描く製図作業をコンピュータでデジタル化したものであり、従来の設計のやり方を大きく変える必要はない。しかし3次元CADは、PCの中に実際の部品や製品の立体形状を作成するもので、従来の製図作業や2次元CADでの設計のやり方に+α(アルファ)の考え方が必要になる。
2 次元CADは、点と軸(線)を基準に設計作業を行う。基本的な軸として、X軸とY軸の2軸である。それに対して、3次元CADはZ軸が追加され、3軸になる。そのうえ、「面」という概念が追加される。基準面として、X軸とY軸でつくる「XY平面」、X軸とZ軸でつくる「XZ平面」、Y軸とZ軸でつくる「YZ平面」の3つの面があり、Z軸を高さ方向として、三面図で考えた場合、XY平面が上面(平面)図、XZ平面が正面図、YZ平面が右側面図となる。3次元CADを使用する場合には、点と軸のほかに、「面」を設計の基準としてうまく活用していく必要がある(図1)。
図1 2次元CADと3次元CADとの設計基準の違い(左)、3次元CAD「Fusion 360」での軸と平面を表示した画面