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機械設計 連載「教えてテルえもん!3次元ツール習得への道」

2024.10.16

第2回 3次元CADでのモデリングの基礎

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いわてデジタルエンジニア育成センター 小原 照記

3次元CADで形状をつくるための基本機能

 3 次元CADでは、形状作成、形状除去、形状変形などの形状処理要素を組み合わせて3 次元形状情報を作成していく。この形状処理要素をフィーチャと呼ぶ。形状を作成するフィーチャには、スケッチした断面を特定の方向に直線的に動かして形状を作成する「押し出し」、スケッチした断面を指定した軸を中心に回転して形状を作成する「回転」、指定したパスに沿って断面を動かして形状を作成する「スイープ」、2つ以上の異なる断面をつないで形状を作成する「ロフト」などがある。使用する3次元CADソフトによって名前が違う場合もあるが、この4 つが形状を作成するフィーチャの基本となる(図5)。
図5 形状を作成する4 つの基本フィーチャ

図5 形状を作成する4 つの基本フィーチャ

 図6 に形状除去と形状変更の基本フィーチャを示す。形状を除去するフィーチャは、基本となる断面形状を指定方向に動かすことにより形状の除去を行う。形状の作成と同じく、断面を動かす方向や断面のとり方により、押し出しカット、回転カット、ロフトカット、スイープカットなどの種類がある。ほかにも、形状と形状を引き算することで形状除去を行う場合もある。一般的にブーリアン演算と呼ばれる機能である。
図6 形状除去と形状変形の基本フィーチャ

図6 形状除去と形状変形の基本フィーチャ

 形状の変形を行うフィーチャでは、既存の形状要素を変形する。全体を一定の厚みの薄い板形状に変えるシェル、面の角度を変えるドラフト、角をとる面取り、丸みをつけるフィレットなどの変形処理を行う。

 これらのフィーチャを組み合わせて3 次元モデルを作成していくわけだが、導入したばかりで3次元CADに不慣れだと、どれをどう組み合わせていいのか悩むだろう。フィーチャの組合せを考えられるスキルが必要になってくる。2 次元CADは線を描いたり消したりして形状をつくっていくが、3 次元CADは積み木を組み合わせていく感覚で形状をつくり上げていく。

 どのような形状であったとしても、そこにたどりつくやり方が複数ある中で、どれが適切なやり方なのかを判断することが大事である。そのために、一つひとつのコマンドの挙動とその結果をよく理解しておこう。実際問題、使うフィーチャが異なれば、形状を修正する方法はまったく異なってくるし、あるフィーチャを修正したときに別のフィーチャに与える影響も異なってくる。

 同じように見える形状でも、実際にはその作業履歴が違う場合がある。無自覚に形状を作成しているとその違いによって、後々その形状を変更したり流用したりする場合に、そのやりやすさが大きく変わってしまい、場合によっては変更できずにつくり直しになってしまうこともある。特定のコマンドを使わないと作成できない形状があるが、部品は通常さまざまなフィーチャすなわちコマンドの組合せでつくっていき、そのつくり方は決して1 つではない。部品の各部位にはそれぞれ目的・役割があり、役割は配置される位置や形・大きさに集約される。フィーチャを配置する基準位置や、フィーチャの形や大きさを決めるエレメント(要素)を参照し、それらをフィーチャの構築時に参照として盛り込んでいく。

 ここで、設計意図を無視して作成したパラメータは、修正・編集作業の手間を増やし、エラーなどの発生原因になる。スケッチ寸法やフィーチャ間の関連性をうまく利用し、設計変更や類似設計時には、最低限のパラメータ修正だけでそれが実現できるように、的確なパラメータを組み込んでいくべきである。

3次元CAD上達のためには練習が必要

 3 次元CADを使い始めて最初にぶつかる壁は「モデリングが難しい」ということである。社内外の講習で一通りのコマンドは教えてもらったが、簡単な部品をモデリングするにしても何から手をつけてよいのかわからない、操作コマンドが多すぎる、せっかくつくったモデルが変更できない、などの理由から、特にベテラン設計者ほど、「食わず嫌い」になりがちだ。モデリングのコツは、フィーチャをいかにうまく使いこなすか、といってもよい。「フィーチャ」という概念を単なるモデル作成上のコマンドやテクニックとしてではなく、設計意図と関係づけることが大事になる。3次元CADでモデリングをする場合、まずは作成したい3 次元モデルを基本形状に分解して考えていく。四角いブロックから削ってつくっていくか、円筒形状から削っていくか、あるいは、形状を追加してくっつけていくか、製造業でいう「切削」や「溶接」をイメージするとよい。

 フィーチャを組み合わせていく際は、設計機能ごとに分けて考えることがオススメである。こうすれば、後からの設計変更にも対応しやすくなる。複雑な形状を一度につくろうとするより、できるだけシンプルな形状を組み合わせてつくっていくとよい。

 3 次元CADを用いた設計には、多くのメリットがある。例えば、2次元のみで設計した場合、「部品が取り付けられない、ドライバーが入らない」、「部品同士の干渉やクリアランス不足が発生してしまった」、「機構が動作しない、動作中に干渉が起こってしまった」、「外観、デザインを詰め切れなかった」、「意図しないところに隙間があった」、「強度不足、質量オーバー」といった、コスト、納期、品質に直結するさまざまな問題に直面することがあるが、3 次元CADによる設計であれば、こうした課題や悩みを解消できる。ぜひ、これを機会にモデリング力を身に付けていってほしい。

 3 次元CADを自由自在に操り、つくりたい形状が素早くつくれるようになるためには、やはり練習が必要である。スポーツと一緒で、日々のトレーニングが不可欠である。練習方法は、自社製品を3 次元CADで作成するほか、2 次元図面が手元にある場合には図面を見ながらの3 次元モデル作成がオススメだが、とにかく3次元CADに触ることが重要である。外部のトレーニングを受けたり、コンサルを依頼したりするのもよいだろう。

 3 次元CADは、一朝一夕で使いこなせるようにはならない。3 次元CADに日々触って練習したり、イメージトレーニングしたりすれば、必ず使いこなせるようになる。この連載が少しでも3 次元ツール習得の役に立つことを願う。あきらめずに頑張りましょう。
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