機械設計 連載「教えてテルえもん!3次元ツール習得への道」
2024.11.05
第3回 3次元CADでのアセンブリの基礎
いわてデジタルエンジニア育成センター 小原 照記
トップダウン設計は、製品全体の機能やレイアウトを決め、個々の部品の詳細を順次作成していく設計手法である。例えば、家を設計する際に敷地面積や全体の形を先に決めてから、個々の部屋の位置や間取りを決めていくイメージである(図4)。周囲にある部品を参照しながら3 次元モデルを作成していくことで部品の干渉を回避し、穴位置のズレなどがないように設計を進めていくことができる。
3 次元CADで設計を進めていく場合、ボトムアップアセンブリとトップダウンアセンブリのどちらかを使用するということではなく、両方を組み合わせて設計を進めていくのが最適なアプローチ法になる。
DX時代の3次元CADのデータ管理とチーム設計
3 次元CADでは、個々に作成した部品データの管理が重要になってくる。間違ったデータ管理をしてしまうと、必要なデータを見つけるのに時間がかかってしまったり、誤って上書き保存をしてしまったり、削除してしまったりなど、貴重な設計資産をなくしてしまうことになる。3 次元CADによっては、ファイル名の変更や保存先の移動が正しい方法で行われなかったことで、アセンブリファイルに部品ファイルが正しく読み込めなくなる「リンク切れ」が生じてしまう場合もあるので、使用する3次元CADの特徴を理解してデータ管理を行う必要がある。
1 つの製品を設計していく中で、製品を複数の部品に分けて、各部品の担当者らが設計を同時並行で進めていく設計手法である「チーム設計」を行う場合には、データを共有サーバーやクラウドに保存したり、データを管理する専用ソフト(PDM:Product Data Management)を使用したりする必要が出てくる。チーム設計の最大の利点は、協力しながら設計を並行的に進めることで、設計期間の短縮ができることである。
実際にデータ管理のルールをつくって運用しても、システム上で仕組みをつくっていないとミスは起きてしまうため、専用のデータ管理ソフトを使用することで、管理者側でデータを編集できる人を制限したり、上書き保存防止に読み取り専用のデータに設定したりできる。誰がファイルを開き、いつ編集したかを管理でき、バージョン管理も可能で、ソフトによっては上書き保存をしても履歴をたどって元のバージョンに戻すことができるものもあり、データ検索も過去の設計情報から容易に探すことが可能となる。
最近はDX化を進めることが製造業で必要となってきている。設計データを管理するだけではなく、製品ライフサイクル全体の管理が求められてきているため、PDMからPLM(Product LifecycleManagement)システムを導入してのデータ管理が行われている。さらには製造業にかかわるすべてのデータをまとめるプラットフォーム(platform)化も進んできている。
3次元CADのさらなるメリットを享受しよう
時代が進んできている中、今回は3次元CADでのアセンブリの基礎について紹介した。2 次元CADで設計を進める中では得られない、多くのメリットが享受できることが理解いただけただろう。3次元CADで作成したデータは、CAEと連携して強度や熱などのシミュレーションを行ったり、制御プログラムと連携させて動作検証を行ったり、生産における組立検証を行ったりするなどさまざまな活用用途があり、今回紹介した以上のメリットがある。
まずは3次元CADの基礎であるモデリングを行い、アセンブリを行うことから挑戦してみよう。いきなり製品のすべてのデータを3 次元モデル化してアセンブリする必要はない。動きを確認したい箇所や、干渉を確認したい箇所の部分だけを抜き出して3 次元モデルを作成し、検証をすることから始めてもいい。2 次元CADと3次元CADの併用から始めて、徐々に3次元CAD での設計に移行していけばいいのである。できることから徐々に取り組んでいこう。